第12章 彼女の考えている事はきっと誰にもわからない。(青城逆ハー)
温泉と言っても場所は県内の温泉地で、電車に揺られて山の方へ向かう。
「んー!晴れて良かったぁー!やっぱり旅行は晴れてなくっちゃテンション上がんないよねっ♪」
及「やっぱり山の方が寒いねー!うー…岩ちゃん暖めてー!」
岩「くっつくなクソ川!ウゼェ!」
及「ひど!じゃあちゃん暖めてー♪…あたっ!」
岩泉の拳が及川の後頭部に入る。
及川は頭を擦りながら岩泉に文句を言う。
及「もー!岩ちゃん痛い!」
岩「お前が変な事言うからだろーが!」
花「オラ仲良しコンビ、見ろお前らが揉めてる間に抜け駆けされてんぞ」
花巻が親指で指した方を見て及川と岩泉は言い争いをピタリとやめる。
松「、荷物貸しな」
「え?いいの?まっつん」
松「うん」
「ふふっ、ありがとー」
松川がのボストンバッグを受け取りひょいっと持ち上げた。
松川のさりげない優しさにも素直に甘える。
花「あーゆーとこ抜け目ないよな」
及「まっつん!ずるい!俺もちゃんと微笑み合いたい!ねー岩ちゃん」
岩「だったらさっさと離れろ!」
しつこく尚も岩泉に肩を組む及川を岩泉は引き剥がす。
その後もたわいもない話をしながら5人で歩く。
電車で約2時間来ただけでこんなにも日常から離れられる。
合宿ではないこの旅行は高校生の彼らにとって胸が躍らない筈がなかった。
「見て!あそこだよー!」
及「へぇ、立派な旅館だね」
「でしょ、口コミも良かったから決めちゃった!」
ロビーに着くとは一人チェックインをしにフロントへ向かう。
笑顔で女将さんと話し、手際よくチェックインを済ませると4人の元へと戻ってきた。
花「そういやちゃん、部屋割りってどうなってるんだっけ?」
「部屋割りって?部屋は5階の角部屋だよ、んと…せせらぎの間」
花「いや、だから…え?」
松「まさか…」
岩「マジでか…」
及「アハハ、ホンットちゃん最高」(笑)
及川はこの流れを何となく予想していたらしい。
そんな予想通り、キョトンとしているの手には鍵が1本だけ握られていた。