第11章 君と話す事は飛行機雲を掴むより難しい筈だった。(菅原孝志)
「えと…菅原くん…?」
「…!!」
なんで俺の名を知ってるんだろう…そんな疑問が顔に全面に出てたんだろうな。
「バレー部、最近強いから知ってるよ」
それに3年生は4人だしね、と付け加えて応えてくれた。
バレー部が強くなった事で彼女が俺の存在に気付いてくれていたなんて。
「あ、でもそれだけじゃないの」
「え?」
そう言うとさんは俺の教室の方角を指差した。
まさか。
「私のハードル、見てくれてるの知ってたよ」
「……!!!」
穴があったら入りたい。
変な汗が背中を伝った。
「ごめん!!」
「えぇっ?」
「、さんがハードル跳ぶところすげー綺麗で…!俺、部活行く前に見んのがちょっと楽しみになってて…とにかくごめん!!コソコソ見られるのなんて嫌だよな」
ひたすらに頭を下げて謝るしかない。
今の俺にはそれしか出来ない。
でも彼女に知られていた事よりもこれから先彼女のハードルが見られなくなるのかと思うとその方がずっと悲しかった。
「ちょっ…!菅原くん!違うの…!」
「……?」
突然頭を下げた俺をさんは慌てて止める。
恐る恐る顔を上げると、さんの顔は赤く染まっていて。
それは俺の想像とは全く別の事実。
「嫌じゃないよ…あのね、菅原くん私が上手くハードルを跳べると、その…笑ってくれるでしょ?」
「え?」
「あれ…勘違いだった…?私それの顔が見たくて、その…」
頑張ってるよ、とはにかみながら彼女は言った。
俺…笑って…?
自分でも気付いてなかった。
恥ずかしさの余り、口元を手で覆う。
「だからね、菅原くんに見てて貰うの嫌じゃないの…寧ろ嬉しいよ!」
「……////」
胸の奥がじんと熱くなる。
顔も熱くなってきたのがわかった。
「さんっ!」
「は、はい!」
友達の一歩だと思ったんだ。
それでもっと仲良くなれたらとも思った。
何より彼女にも俺も言う人間を知って欲しい。
「陸上部が休みの日、良かったらバレー部見に来てよ」
「え…?でも、いいの?」
「俺の頑張ってるトコも見て欲しいなぁって…なんて…//」
「!…うんっ!見たい、あ、今度バレーのルール教えて欲しいかも」
断られなかった事に舞い上がりそうになる。