第11章 君と話す事は飛行機雲を掴むより難しい筈だった。(菅原孝志)
「スガー?おーい、まだ着替えてないのか?」
「あっ!大地、すぐ行く!」
「おー急げよー!」
大地の声が容赦なく俺を現実に引き戻した。
永遠のように感じる時間も無情にも針は進んでいる。
「ごめん、さん、俺も部活行くよ」
「うん、私も戻らなきゃ」
「じゃあ…」
「「またね」」
「「あ」」
また被った。
今度はお互い顔を見合せて笑う。
こんな事がなんかすげー嬉しく感じる。
もう一度笑い合って彼女と別れた。
俺は急いで部室に向かい練習着に着替えた。
彼女とは違うクラスで違う委員会で違う部活で…でもちゃんと会えた。
「なんか運命っぽいよなぁ…」
「運命?菅原お前まだこんなトコにいんのかよ」
「う、烏養さんっ!」
「ホラ、急げよ」
「ウスッ!」
気付くとさっきまでの飛行機雲はもうぼやけて空に溶けてしまっていた。
明日は、俺から声を掛けよう。
そしたらまた笑ってくれるかな。
集合!と皆を集める大地の声に俺は走って体育館へ向かった。
END