第8章 七色より美しい色があるとしたらそれは君だと思う。(菅原孝支)
何となく手を離せないまま坂下商店を過ぎて、辿り着いた場所。
「公園…?」
「そう、こっち」
子ども用の小さな家の遊具、まさか入るの…?
遊具を見ているとが先に中に入る。
その時手を自然と離されたことがちょっと寂しいなんて思ってしまった。
「菅原も、入って」
促されて入ったものの、高校生が二人入るとすごく距離が近くなる。
こ、子ども用だもんな。
「はい、菅原」
「タオル…?」
通学用にしては少し大きめのリュックからはタオルを二枚取り出して俺に手渡す。
「遠慮せず使って、私のは別にあるから」
そう言ってまたリュックから別のタオルを出して、ね?と俺に見せて笑った。
あぁ、ホラまただ。
また顔が熱い。
「タオル…さんきゅ///」
「うん」
「、スゲー嵐だけど…帰んなくて大丈夫なのか?」
「うん、もう少しで通り過ぎるから」
「え?」
受け取ったタオルで頭を拭きながらを見る。
同じように髪を拭きながら彼女は笑っていた。
その顔は何かを楽しみに待つ子どもみたいで、学校を出た時に感じた大人っぽさとはまた違った印象だった。
「私、昔から台風ってなんか好きで」
は長い髪を丁寧に拭いて、手首に着けていたゴムで簡単に一つに結ぶ。
「なんかね…ワクワクすんの、小さい頃なんか傘持って空飛べるかも!なんて思ってたし」
「あ…それは分かる気がする」
「でしょ?」
あ、また笑った。
こんなに近くで彼女を見たのも、こんなにたくさん話したのも今日が初めてだ。
なのに不思議と打ち解けられる。