第8章 七色より美しい色があるとしたらそれは君だと思う。(菅原孝支)
「これは…傘の意味なさそうだなぁ」
昇降口まで来ると思った以上の雨風の強さに差そうとした傘を畳む。
どうするか迷っていると俺の前を平然と通り過ぎ、濡れて歩く人が目に入った。
「え…あ!!」
咄嗟に呼び止める。
振り返ったのは同じクラスのだった。
そんなに話したことないのに…つい呼び止めてしまったことに少し後悔する。
「菅原…?」
「あ、いや…そのまま帰るのかなって…」
「うん、そう」
は当たり前のように答えた。
「傘は…?」
「ないよ、って言うより元々持ってきてない」
「え?なんで?」
「だってこんな日に差しても傘壊れちゃうだけだし、勿体ないでしょ」
そう言って笑うは雨に濡れていつもよりもなんか…ずっと大人びて見えた。
長目の髪を手で押さえる、そんなごく普通の仕草すら色っぽく見えてしまう。
馬鹿か俺は…!
自分の思考を散らす様に首を思い切り横に振る。
「菅原、家どっち?」
「えっ?!///」
「だから、家の方向」
「あ…坂ノ下商店の、方だけど…」
ドギマギしている自分に比べ落ち着いているを見るとなんか恥ずかしくなってしまう。
一人でアタフタしてカッコ悪…。
「だったら一緒に帰らない?私も同じ方向だから」
「あ…うん」
返事はしたものの、雨の中歩き出すことに戸惑っていると手を引かれた。
「…っ?///」
「夕方には良いモノ見られるはずだから、行こう?」
「良いモノって…?ちょっ…!?!」
手を引く事に何の戸惑いも見せず、はどんどん進んで行く。
雨は冷たい筈なのに、掴まれてる手と顔が熱いのは何でなんだろう。