第7章 童話パロディ『白雪姫』(月島蛍)
それから数日経った日のこと。
「大丈夫か?月島」
「これ位…何とも…」
鉱山から戻った小人たちを姫が出迎えると、月島が腕に怪我をして帰ってきた。
袖が捲られた箇所は擦りむいてうっすらと血が滲んでいた。
「つ、月島くん…っ!腕が…っ!」
慌てて姫が駆け寄る。
そして怪我をしていない方の腕を掴み家の中へと引っ張る。
「ちょ…!何してんの…っ」
「手当て!しなくちゃ!」
「そんなの必要ない、これ位別に…」
「ダメ!!」
月島は姫を制そうと断るが反対に勢いよく断られた。
「ダメって…」
「バイ菌入ったら悪化しちゃうからちゃんと手当てしなきゃ!」
「別に…いいのに//」
「はい、出来た…!しっかり洗ったしもう大丈夫だよ」
手当てなどしたことがない姫はもたつきながらも包帯を巻く。
「…………」
(…なんか、包帯不格好だけど)
「気を付けて下さいね…心配、だから」
「…うん」
心配そうに微笑む姫に月島は素直に頷いた。
胸の奥に明かりが灯った様な気がした。
それから数日後、それは起こる。
「じゃあ姫、戸締まりヨロシクな」
「はい、皆さん気を付けて!行ってらっしゃい」
いつもの様に鉱山へ出掛ける小人たちを見送り、姫は家事に取りかかる。
そこへ現れたのは一人の老婆。
「お嬢さん、美味しいりんごはいらんかね…?」
「あら…?まぁ、お婆さん美味しそうなりんごね」
「ほっほっほっ…お嬢さんはとても美しいから特別にこのりんごはタダでやろう」
「まぁ!それは嬉しいわ♪私りんごが大好きなの」
如何にも怪しい老婆なのにも関わらず、素直な姫は老婆を疑うこともなくりんごを受け取り迷わず一口かじった。
次の瞬間、
「あ……っ…」
姫の意識は遠退き、その場にパタリと倒れ込んでしまう。
「ほっほっほっ…これで姫はもう終わり、私がこの世で一番美しい!」
老婆は女王だった。
期待を裏切らず女王だったのだ。
姫の息がないことを確認すると城へと引き返していった。