第46章 真夏の方程式、答えは全て彼の手中に。(二口堅治)
「や…あの、明日のテストなんか自信ないから復習してから帰ろうかと……」
「はァ?!お前補習聞いてなかったのかよ?!」
「き、聞いてたのだけども…」
「聞いててわかんねーってマジかよ」
呆れ気味に二口にそう言われは恥ずかしくなって俯いた。
「で、どこがわかんねーの」
「え……?」
「わかんねーヤツが一人で復習したって時間のムダっつってんの」
の前の席に座った二口は鞄を床に投げ置くとの開いているノートに目を落とす。
急に縮まってしまった距離に不意を突かれたの心臓はドクドクと音を立て始めた。
(…なに、意識してるの、私…)
二口くんはそんなつもりじゃない。
大体モテるこの人が、私の世話を焼くこと自体きっと気まぐれなはず。
期待しちゃ、いけない。
「わかんねーの、ここか?」
「あ、うん…そうなの」
「ここは……この公式使えばいいんだよ、ほら」
「あ、ホントだ……!」
その後も、二口との居残り勉強はつづき、気付けば日も傾き始めていた。
「そろそろ終わんぞ、こんだけやりゃ平気だろ」
「ありがとう…!二口くん!助かりました…!こんな時間まで付き合わせちゃってごめんね…」
「別に…その代わり明日ヘマしたら許さねーからな」
「…はい!」
嬉しそうに返事をしたに二口も口元を緩ませた。
そして、翌日。
補習テストの時間がやってきた。
「ふぁ…」
「デケーあくび…寝てねぇのかよ」
「二口くん…や、帰ってからもちょっと一人で勉強してて…気付いたら夜中だったの…はは…」
「テスト中寝んなよな?」
「ね、寝ないよ…!」
配られた答案用紙。
そこに書かれた問題を見ては心の中でガッツポーズを決める。
こんなに手応えのあるテストは初めてかもしれない。
「よし、そこまで」
時間ちょうどに先生からの声が掛かりと二口は答案用紙を渡した。
すぐにその場での採点が始まる。
(お願いします…!)
は祈るような思いで先生のペンの動きを見つめていた。