第45章 僕たちのポートレート。【月島END】
月島の匂いに包まれながらは必死に言葉を探した。
どう言えば、伝わるだろう。
迎えに来てくれたこと、嬉しかった。
泣いて良いって言ってくれて嬉しかった。
また全国を目指すって教えてくれた。
そして、また写真を撮って良いって言ってくれた。
いつからだろう。
静かなる闘志をどうしても写真に収めたくて月島くんのプレーをカメラで追うようになった。
いつからだろう。
撮った彼の写真を家で眺めるようになったのは。
この想いを、全部まとめて月島くんに伝えるには。
「…………好き、」
これ以外に、見つからないよ。
月島くん。
「……………」
「あ……?…私、あの………!」
「………ちょっと、待って」
待ってと言われて咄嗟には唇を噛み締める。
驚く月島の顔を見て後悔の波が押し寄せた。
どうして私は、あんな大事な事を今口走ってしまったんだろう…!
後悔してももう遅い。
すぐに月島から離れようと彼の胸を押してみるもビクとも動かない。
「……待ってとは言ったけど、逃げて良いなんて言ってないよ」
「月……っん…!」
一瞬、何が起こったのかには中々理解できなかった。
ただ、ゆっくりと唇から伝わる月島の体温からこれがキスなのだと時間差で気付く。
「ん…ぅ……はぁ…」
大きな月島の手がの後頭部を押さえ固定する。
角度を変えながら徐々に深くなるそのキスはの呼吸を荒くさせた。
「それは…こっちの台詞だから、」
「月島く……」
「…僕も、好き」
優しい声色。
月島のその言葉にはまた涙が溢れた。
「…だから、ずっと追いかけてくれないと困るんだけど」
僕たちはここで立ち止まったりしないから。
だから先輩も前を向いて欲しいんだ。
「うん……私、追い続ける。月島くんの写真、撮る…!」
「………!」
そう言ってが見せたのは、とびきりの笑顔。
月島の胸がドキリと音を立てた。
「不意打ち…やめてよね」
「ん…?」
「…なんでもない」
赤くなってしまった顔を隠すように、月島はまたを強く抱き締めた。
END.