第45章 僕たちのポートレート。【月島END】
………………………epilogue
未だに気になっている事がある。
先輩を初めて見たあの文化祭の渡り廊下。
窓を見上げていた彼女は何を考えていたのだろうか。
まぁ別にどうしても聞きたいわけじゃなかったし。
なんとなく、そのままになっている程度の事だった。
「蛍くん…!」
先輩とは初めての春高で敗退したあの日から付き合いだして、もう2年が経とうとしていた。
「無理して来なくていいって言ったのに」
「そ、そんなわけには行かないよ……だって…!」
デザインの学校で本格的に写真を学び出した彼女は日々学校からの課題に追われていたのは知ってる。
そんな中で時間を作って試合に駆け付けてくれるのは嬉しかったけど悪い気もしていた。
「いよいよ、だね…」
「まぁ…やる事はいつもと変わんないから…」
「少しは腕も上がったと思うから…任せてね」
そう言って先輩は首から掛けていたカメラを構えて見せた。
そんな姿が妙に懐かしくて、気付けばずっと気になっていたあの事を口にしていた。
「……僕が1年の時の文化祭でずっと空を見てた理由、教えてよ」
「え……?」
キョトンとした顔で見つめてくる。
そりゃそうか、あんな些細な事覚えてるわけない。
なんでもない、そう口を開こうとした時だった。
「……てっぺんを撮った写真がどんななのか考えていたの」
「……てっぺん?」
「あの、ビルとか山とかの上…じゃなくて、何て言うんだろう…何にも囚われずに自由に好きなものを追求した写真…って言うか…」
「ふーん……」
「ごめん、わけわかんないよね…」
先輩は少し肩を落として小さく微笑んだ。
先輩の言う『てっぺん』がどんなものかはきっと先輩にしかわからないんだろうけど。
「僕からも『てっぺん』あげるつもりでいるから」
「蛍、くん……?」
「ツッキーそろそろ!」
山口の声が聞こえて僕はポカンとしている先輩の唇に触れるだけのキスを落とす。
「いってきます」
「い、い、いって、らっしゃ……っ、」
「しっかり僕(好きなもの)を追求して撮ってよね」
「………っ!?」
最後の春高、決勝戦。
誰かの為にバレーをする日が来るなんて思ってなかったよ。
HAPPY END.