第44章 僕たちのポートレート。【縁下END】
「新人戦…ですか?」
「はい、さんに是非その写真を撮っていただきたいのです、どうでしょうか?」
新体制になっての初めての大会。
荒削りで噛み合わないところもあるだろうけど、そのスタートラインを記録に残して欲しいとの事だった。
「やります…やらせてください」
直ぐに即答した。
またバレー部のみんなの写真が撮れる事が素直に嬉しかった。
それに、縁下くんの力に…なれるかもしれない。
そんな淡い期待が鼓動を速くする。
「ありがとう、君ならそう言ってくれると思ってました!練習にも是非顔を出して下さい、皆喜びます」
そう言って武田先生はニコリと笑った。
私は一礼を返して職員室を後にした。
「」
「………!!」
職員室を出たところで後ろから掛かった声に振り向いた。
一気に、鼓動が加速する。
久しぶりに呼ばれた名前。
目線を上げればついさっきまで考えていた縁下くんがそこにいた。
「もしかして、新人戦の話だった?」
「え……」
「ごめん、武田先生に呼ばれてたのが見えたからそうかなって…」
「あ…うん!そうなの、写真を撮って欲しいって…」
私がそう答えると一瞬縁下くんの顔が曇った気がした。
「………?」
もしかして、あんまり歓迎されてないのかな…。
自分に出来る唯一だと思っていた写真、それが迷惑になるのだとしたら。
ドキドキしていた胸が、今度はズキズキと痛み出す。
「……、」
「…………っ、あの、私」
「ごめん、違うんだ」
「………?」
申し訳なさそうに笑った縁下くんが私の頭をそっと撫でた。
「今日、久しぶりにバレー部に顔出せる?」
「う、うん……!」
「…良かった、じゃあ放課後待ってる」
それから二人で並んで教室に戻る。
次の授業の話とか、そんな当たり障りのない会話をしてた間も、私はさっきの縁下くんの顔が気になって。
でも、それについて聞くことが出来ないまま教室に着いてしまった。
そして気になったまま放課後、バレー部に顔を出す時間がやってくる。
「1本、ナイッサー!!」
「さっこーーい!!」
体育館に近付くにつれ聞こえてくる声に期待が高まる。
念のため持ってきたカメラを抱え直して体育館の扉をくぐった。