第42章 僕たちのポートレート。⑦
「眩暈や頭痛はどう?」
「大丈夫です」
「どこにも痛みはないかしら?」
「あ、はい」
「なら大丈夫だとは思うけどもし体調の変化が見られたらすぐに病院へ行ってね」
「…わかりました」
保健室では養護の先生とが簡単に話をし、それを側で月島が黙って聞いていた。
相変わらずのポーカーフェイスだが、彼女の痛みはないという事に内心酷く安心していた。
「ありがとうございました…」
そのままは帰ろうと昇降口へ向かう。
が、月島はどうするのだろう?と見上げて視線を向けた。
「……なに」
「え、あ…付き添ってくれて、ありがとう…じゃあ、私はここで……」
「何一人で帰ろうとしてるのさ」
「へ?」
「鞄、取って来るからここにいてよね」
「え、あ!月島くん……!」
止めるのも聞かず行ってしまった月島の背中をはただ見送るだけになってしまった。
要するに今のは、
(い、一緒に帰ろう…って事なのかな…)
それから数分後、ジャージに首にマフラーの月島が戻り肩を並べて二人で帰り道を辿る。
「………」
「………」
普段の帰り道は菅原が常に話し掛け、それにが答えながら帰るのだが月島との帰り道はとても静かなものだった。
耳を澄ませば道沿いの家から聞こえる団欒の声。
それすらも止んだ時は二人の足音だけが辺りに響いていた。
「ねぇ」
その静粛を破ったのは月島だった。
「は、はい…!」
「これ…いつ作ったの」
「………あ…!そ、それ……」
月島が鞄から取り出して見せてきたもの。
それはついこの間武田にUSBメモリを託して、ようやく完成したバレー部の写真集。
うまく気持ちを言葉に乗せられない分、目一杯に詰め込んだ『応援』と『願い』。
「しばらく、体育館に顔を出せなかったのは…それを作っていたの…この話を貰って、みんなが東京へ行く前に…どうしても渡したくて、」
を昇降口で待たせている間、体育館に戻った 月島は山口にこれを手渡された。
興奮気味に見て見て!と言う山口に仕方なくページを捲れば。
切り取られた、瞬間の数々。