第42章 僕たちのポートレート。⑦
バレーをしている時の自分の姿なんてほとんど見る機会なんてない。
こうして形になって目の前に差し出されると照れ臭い、だけどそれよりも勝るじんわりと広がる熱が心にはあった。
わからなかった想いの名が、明確に月島の頭の中で響き渡る。
「…あの、月島くん………?」
質問に答えたら急に黙られた。
何かまずかっただろうか?そんな不安がの胸を過る。
「菅原さんか縁下さんと付き合ってたりするの」
「……え?………えぇっ!!??」
写真集の話はどこへ。
苦手な会話のキャッチボール。
頑張って返した答えの次の返球はとんでもないものだった。
(もはやデッドボール……!!)
ちらりと目が合った月島の目は誤魔化すなと言わんばかりの真剣なものだったのでは正直に話をせざるをえなかった。
「つ、付き合ってません……!でも…あの、お、お付き合いを…申し…こまれました………」
「なんで敬語に戻るの」
「う…ぁ…ご、ごめん………!」
そんな事だろうと思った。
いつもならあの二人と話す事が多い彼女が今日は何処かよそよそしかった。
それは、何かあった証拠だと思ったから。
(…三番手なのは癪だけど、)
「それで?どっちかと付き合うワケ?」
「へ…?あ、えっと………私…」
「僕も」
「…!」
「それに参戦するつもりだから」
の言い掛けた言葉を月島がそう遮った。
思い返せば、文化祭のあの時。
あの写真に目を奪われてから心の片隅にの存在があったのかもしれない。
「じゃあ僕はここで」
「………う、うん…送ってくれてありがとう…」
きちんと自宅前まで送ってくれた月島はそれだけ言うと来た道を引き返していった。
ぼんやりとした思考のまま、は玄関をくぐり自室へと入るとそのままベッドへ倒れ込んだ。
(どうなってるんだ…………)
月島くんの言った参戦って何?
それって私と付き合うつもりでいるって事…?
いや、からかっているかとしれないし……!
「……………ううん、違う」
それを告げた月島の目は。
冗談を言っている目じゃなかった。
………全ては春高が終わったら。
願わくば、その終わり方が日本一でありますように。
はそう強く思いながら胸元をきゅっと握り締めた。