第42章 僕たちのポートレート。⑦
東京へ出発する前日、バレー部は午前中にこっちでの最後の調整を行う。
セットアップの確認。
サーブレシーブ。
それからブロック。
やることはいつもと変わらないが今日は烏養コーチが練習を止め皆で確認する場面が多かった。
全員のイメージを統一しなければいい形は作れない、その為の確認なのだ。
カシャリ。
真剣なバレー部の顔にはシャッターを切った。
「………」
が東京へ行くのは明後日の朝。
試合前にバレーの練習に顔を出せるのは今日が最後だった。
菅原と縁下、どちらとも顔を合わす事になるが気まずいなど考えている余裕はない。
彼らの輝く一瞬を、これっぽっちも逃したくはなかったからだ。
(それが、私の……誠意だ)
それから夢中でシャッターを切り続けた。
影山のサーブ、西谷のレシーブ、日向のスパイク。
そして月島のブロック。
「…………」
クールな彼が瞳の奥に宿している熱をどうしても写真に収めたい。
のそんな些細な欲が一歩体をコートへ近付けた。
その時だった。
「危ない……!!」
「え、」
清水の声が聞こえたとカメラから顔を上げた瞬間、目の前にボールが迫っていた。
(避けられない…!)
それでもカメラだけは、と庇うようにしてカメラをお腹に抱えた。
バシン!と大きな音が響いて皆の動きが止まった。
「!」
「さん…!!」
「!大丈夫か!」
「……………」
駆け寄る部員達を武田が宥め落ち着かせる。
「軽い脳震盪でしょう…保健室を運んで安静にさせてあげないとですね…」
武田の言葉を聞いて真っ先に口を開いたのは月島だった。
「………僕が行きます」
「月島くん…じゃあさんをお願いできますか?」
「はい」
そう月島が返事を返した時、の瞼がゆっくりと開かれる。
「ん…………」
「さん、大丈夫ですか…?」
「武田先生…?あれ、私は…」
「流れ球にぶつかって…気を失っていたんですよ」
「………!」
は自分の周りに集まり心配そうな顔をしている皆を見て顔を青くした。
「…わ、私のせいで練習止めて、ごめんなさい……!」
勢い良く頭を下げるの頭に大きな手が乗る。