第40章 僕たちのポートレート。⑤
「………!」
「さっきまでさ、バレー部三年みんなで初詣に行ってたんだ」
「………」
「神様に必勝祈願したんだけど緊張は和らがなくて。清水は俺らの力で勝ち進めるって言ってくれたんだけど…それでも、まだどっか不安だった」
白鳥沢に勝った事も時々信じられなくなる。
もしも、もう一度戦ったら果たして自分達は勝てるだろうか?
それどころか青城にだって。
そんなどうしようもない『もしも』が不意に襲い掛かってくる。
「菅原先輩……」
「でも、この写真見たらそんなの全部吹き飛んだ」
菅原は歯を見せて笑った。
自分達はこの太陽に向かうカラスと同じ。
日本一を目指すチャレンジャーなのだ。
悩む事なんてない、ただ全力を出し切ればいい。
「……す、菅原先輩!」
「…?どした?」
「すぐ、戻ります…!ちょっと待ってて下さい…!」
「え?あ、?!」
スクッと立ち上がったはベンチに菅原を残し
全速力で走り出す。
向かう先はコンビニ。
私の写真が、力になるのなら。
背中を押すまではいかなくても、ほんの少し心を温められるのなら。
私の、出来ることをしよう。
「ありがとうございましたー」
コンビニ店員の決まり文句を背には来た道をまた走る。
こんなに走るなんていつぶりだろう?
元旦だと言うのにもう一年分くらい走った気がする。
「菅原先輩…!」
「おかえり、どこ行って」
「これ!!」
「……?」
菅原の
言葉を遮ってが差し出した一枚の写真。
それは菅原に見せたばかりの初日の出の写真だった。
「………」
「御守りに、なるかはわかりませんが……良かったら…いや!あの、いらなかったら捨ててくだ」
「捨てるわけ、ないだろ」
「…………っ、」
写真を差し出していた腕をそのまま強く引かれ、気付けばはすっぽりと菅原の腕の中に収まっていた。