第40章 僕たちのポートレート。⑤
「あれ??」
「…!」
突然名前を呼ばれ驚いてが振り向くと、笑顔を浮かべた菅原の姿があった。
「菅原先輩……!あ、明けましておめでとうございます…!」
「明けましておめでとう、新年からに会えるなんてラッキーだな俺」
「………っ、」
寒さをはね飛ばすような爽やかな笑顔は胸をときめかせ、は思わず俯いた。
名前で呼ばれる事にまだ慣れずドギマギしてしまう。
「ずいぶんと大荷物だけど、どっか行ってたのか?」
「あ……えと、初日の出を撮りに……」
「おぉーっ!初日の出かぁ!写真、見てもいい?」
「あ…はい!」
「荷物重たそうだし…が良ければ公園に行かないか?」
「は、はい…!」
公園のベンチに移動した後、はカメラを起動させる。
菅原は近くの自動販売機に飲み物を買いに行っていた。
「ほい」
「え、あ!すみません…私の分まで…」
「ハハ、何言ってんだよ、当たり前だろ!」
当然の様に二人分の飲み物を手に戻ってきた菅原は一つをに手渡した。
「ありがとう、ございます…」
「ん、素直でよろしい」
一息入れたところではカメラを差し出した。
「これです…今年は特別縁起が良い写真が撮れました」
「特別?」
そう不思議に思ってカメラの画面を覗き込んだ菅原は大きく目を見開いた。
「…これって」
「はい、たまたま…だったのですが、カラスが一羽飛んでいて」
綺麗な朝陽に向かって大きく羽根を広げたカラス。
「撮っていた他の人は残念がっていましたけど…私には、その、なんだか特別に見えて……」
返事がない事に不安になり、チラリと菅原の様子を伺うと食い入るように画面を見つめていた。
「あの、先輩………?」
堪らずは声を掛ける。
気に障った事を言ってしまっただろうか。
ところが、菅原から返ってきた言葉はそんな心配を一蹴した。
「俺にも特別に見えるよ」