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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第39章 僕たちのポートレート。④


特に何かを話すわけでもなく部室に着き、それは中に入った今も変わらずにいる。
ここに来る前に立ち寄った自販機で買ったスポーツドリンクを月島はごくりと飲んだ。
飲みながら横目での様子を伺う。
彼女はどうやらこの沈黙をどうも思っていないらしい。

あの文化祭の日と同じ、部室の窓の外をただ見上げていた。

(この空気に戸惑ってたのは僕だけって事……それってなんか、)


癪だ。

はどちらかと言うとマシンガントークで来られたりする方が苦手だった。
だから尚更人の多い体育館よりも静かな部室の方が落ち着けていた。

「あの、」
「……は、はい!何でしょう…?」

突然月島が話し掛けてきたことで穏やかだった心臓は一気に走り出す。

「それ、どうにかなりませんか」
「それ……?」
「敬語」
「えっ…」

また一口、ドリンクを口に含む。

「先輩の方が年上なのわかってます?」
「あ…そう、なんですけど…敬語で話されるとつい…」
「それって……僕も敬語をやめたら先輩もやめるって事?」

抑揚もなくそう問う月島に、何が正解なのかわからずにいたは、

「あ…うん」

ただそう答えて頷いた。

「ふぅん…変な人」
「ご、ごめん…」

そうそっけなく言うものの月島の口元には小さな笑みが見えていた。

「一つ、聞きたいことがあったんだ」
「…聞きたい、事?」
「文化祭の時の事」
「文化祭……」
「僕はあの時、先輩の写真を見てた」




一人しかいない写真部に与えられたスペースは僅か渡り廊下の壁一枚。
そこをどう彩るかを考えて飾ったパネルも殆どの生徒が素通りだった。

それなのに、

目の前の月島は「見た」と言う。

「…………!」
「あの時、先輩はずっと窓の外を見ていて…何を見てたの……先輩?」

自分を見たまま固まっているを不思議に思い月島は首を傾げた。

「ご、ごめん……!ビックリして…足を止めてくれた人がいたなんて思わなかった、から…」
「…?そんな驚く事でもないデショ?」
「ううん、すごく………ーーーー」


月島は、持っていたドリンクを思わず落としそうになる。
なぜならその時のが、



「嬉しい…ありがとう、月島くん」



照れたように、はにかんで微笑んだからだ。


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