第39章 僕たちのポートレート。④
「月島くん……?」
「……っ、何でもない」
こんな事で心を持っていかれてしまうのか。
思っていた以上にどうやら自分は彼女を気にかけていた。
それも、重症レベルだ。
「、先輩」
「え……?」
不意に名前を呼ばれ顔を上げれば、顔を赤くしてまるで睨むように月島がを見ていた。
ドキリと胸が鳴る。
「あの、月島くん……」
「敬語やめたんだから名前で呼んでいいよね」
「それは、うん…いいけど…」
どうして顔がそんなに赤いの、そうが口を開こうとした時だった。
「ツッキー!!体調どう?そろそろミーティング始めるって!」
ノックと共に外から山口の声が聞こえた。
「山口…うるさい…」
「ごめん!ツッキー!」
立ち上がった月島はふぅ、と小さく息をついてを振り返る。
そこにはいつも通りのクールな表情をした月島の顔があった。
まるで、さっきの赤面が見間違いだったのかと思うほどにいつも通りだ。
「戻るよ」
「えっ…あ、うん」
声を掛けられて慌てても立ち上がる。
その次の瞬間、
「つ、き………?」
驚きで声がでない。
気付いた時にはは、月島の腕の中にいた。
「心配、してくれてありがとう」
耳元でそう聞こえたと思うと体がパッと離される。
そのまま月島は山口の待つ外へと出て行ってしまった。
一人部室に残されたは驚いて腰の力が抜けその場にへたり込む。
「………なに…なんだったの…?」
試合の後なのに爽やかな香りがしたとか、自分よりも熱い体温だったとか。
耳に残る月島の綺麗な声だとか。
考えると恥ずかしくなる情報が頭の中を巡る。
どうして抱き締められたのか。
それはわからないけれど、でも、
「お礼を、言われた……?」
それだけはわかった。
「ホントに……月島くんて、わからないよ…!」
一人呟いたの嘆きは部室の天井に吸い込まれて消えていったのだった。