第39章 僕たちのポートレート。④
「……腕、もげそう…」
「やっぱりそう思いますよね!私も未だに思っております…!」
強烈な伊達工のサーブを受ける西谷を見ての口からはついそんな言葉が漏れる。
隣にいた谷地もそれに激しく同意した。
「……すごい」
今までの練習や練習試合も観てきた筈なのに。
カメラ越しではない、自分の目で観るとこうも違うのか。
ピーッ!とホイッスルが鳴りそのセットが終わった事を告げた。
「フライングいっしゅーうっ!!」
澤村の合図で烏野メンバーが動き出す。
「…?」
「縁下くん…!お疲れ様」
「うん、ありがとう。久しぶりだね」
「ちょっと作業が佳境だったの…でもそれも無事に終わって学校に戻ってきたら…みんなすごいね」
は休憩中で誰もいないコートに視線を送った。
「相手も伊達工…うちのライバルみたいなトコだし、春校も目前だからね、みんな気合い入ってるよ」
がここに来る前に一揉めあったんだと言う。
でもそれは必要な衝突だったんだとも縁下は言った。
にはよくわからなかったけれど、休憩中もお互いに意見を言い合うメンバーを見てとてもエネルギーを感じていた。
(ぶつかり合っても、それは必要な、事……)
人を避けるように過ごして、自分を表現出来ていたのは言葉ではなく写真だけ。
そんなはバレー部と関わることで大きく変わろうとしていた。
言葉の大切さ、必要性。
それは時に凶器となり、時に人を救う。
だからこそ真剣な言葉には重みが生まれる。
「これが最後のセットだ、いくぞ!」
「「「ウスッ!!!」」」
目の前の、彼らの言葉のように。
ピーッとホイッスルの合図でサーブが始まる。
疲れているはずなのに集中力を切らさないメンバーを見てはゴクリと息を飲んだ。
ミドル日向からの速攻、レフト東峰からの強烈なクロス。
ライト田中のラインギリギリのストレート。
「だぁぁっ!クソ!!」
惜しくもアウトになってしまったが、味方からは誉め言葉と励ましの言葉が飛び交っていた。
伊達工のブロックもこの終盤にきても高さを落とさない。
何度かそれに捕まる日向だったがその表情は何処か嬉しそうだった。