第39章 僕たちのポートレート。④
冬休み、年明けを目前にした12月の体育館。
「最近さん見なくね?」
「あー!そういえばそうだな」
「どうしたんだろう?」
こんな会話が、バレー部で繰り広げられている頃。
「……出、来た…!」
は一人自宅の自室に籠りパソコンと顔を突き合わせていた。
そして作業を終えパソコンからUSBメモリを抜き取ると自宅を飛び出した。
目指すは学校。
本当は明日でも良いのだけれど、一刻も早く完成させたい。
普段ほとんど走ったりする事のないはすぐに息が上がり、白い息が寒空へと立ち上っていった。
それでも足を進める、早く鞄の中身を届けたくて。
「……武田、せんせ、いっ!」
「さん?!どうしたんですか!そんなに慌てて…!あ、もしかして…?」
「はぁ…っ、…はい、出来上がりました……っ」
「……!」
は鞄からUSBメモリを取り出すと武田に手渡した。
「…確かに受け取りました。後は僕に任せて下さいね」
「はい…!」
小さな小さなその中に、自分の想いの全てを詰め込んだ。
コートに立てない私が、彼らの為に出来る全力。
「失礼しました…」
職員室を後にしたはふと自分がカメラを持っていないことに気付いた。
出掛ける時はどんな時も持ち歩いていた相棒を家に置いてきた、こんなことは初めてだった。
(早く渡したくて…忘れちゃってたんだ)
の足は自然とバレー部の体育館へと向かっていた。
体育館に近づく度にボールを打つ音とシューズの擦れる音が聞こえてくる。
それと、冬の寒さを吹き飛ばす程の、熱気。
「そうか、今日は………」
今年最後の練習試合。
「ナイッサー!!」
「一本で切るぞ!!」
「「サッこォォーいッ!!」」
ガラガラ…と控え目に音を立てて開いた扉の先には、
「………っ!」
体がビリビリと痺れそうになるほどの緊張感がを包み込む。
練習試合と言えど相手はライバル伊達工。
両校の凄まじい集中力がその空気を作り出していた。
「あっ!さんっ!こちらです!」
「あ……うん…っ」
に気付いた谷地が手を挙げて声を掛けた。