第38章 僕たちのポートレート。③
その日の帰り。
どことなく肩を落とすに菅原が声を掛けた。
「さん、良かったら今日も一緒に帰ろう?」
「菅原先輩……」
悪いし断ろうとしたより先に菅原が口を開く。
「……今日の休憩中さ、月島となんかあった?」
「……!」
その言葉には少しだけ俯いた。
何かあったわけじゃないが、何もなかったわけじゃない。
もしかしたら自分の勘違いで月島は嫌な気持ちにさせたかもしれない。
そう思うの酷く後悔にかられる。
「とりあえず、行くべ」
菅原の優しい笑顔が心に沁みて泣きそうになった。
「……月島くんに、私がその、変な事を言ってしまったので…気を悪くさせてしまったのかもしれません」
「変な事?」
二人で帰り道を歩きながら休憩時間の出来事をはぽつりぽつりと話し始めた。
月島の視線を感じたこと、
それが勘違いだと言われたこと、
恥ずかしくて逃げ出したこと。
「とても厳しい顔をしていたので…怒っていたのかもしれません…」
「うーん、月島は大体いつもあんな感じだからなぁ。それに…多分視線も勘違いじゃないと思う」
「え……?」
声を掛けた時の月島の反応はを全く気にしていない反応ではなかった。
むしろあれは、
(気になって、ずっと見てたって反応だよな…)
「とにかく大丈夫!」
「……は、はい…!」
明るく大丈夫だと言われの沈んだ気持ちも少し軽くなる。
その様子を見て菅原もニッコリと笑みを浮かべた。
「今日の写真もすごかったなー!西谷の回転レシーブメチャクチャ格好良く撮れてたじゃん」
「回転……あ!ローリングサンダー?ですか?」
「ははっ!そうそれ!」
少しずつ心を開いてくれているのがわかる。
あんなにビクビクしていた彼女と自然な会話が出来るようになったんだからすごい進歩だと思えた。
「…もう一つ聞いていい?」
「は、はい…」
菅原が、今日の練習で気になった事。
『』
縁下が、彼女の事をそう呼んでいた。
先週までは確かに違ったはずなのに、どうして、急に。