第37章 僕たちのポートレート。②
「あの…、お姉さん…?」
「冴子でいーよ」
冴子の部屋に連れてこられたは床に座らされ何故かゴミ箱を抱えさせられていた。
「さ、冴子さん…これは…?」
「ねぇ、前髪!アタシに切らしてくんない?」
「………!いや、でも…!」
この長さがなければ恥ずかしくて人前に出られない。
「アンタさ、ちゃんだっけ?前髪切ったら絶対可愛いよ!それに、」
「……?」
冴子は自信たっぷりの顔でに告げた。
「今まで見えなかった景色、見えたりするかもしんないよ」
その言葉はの心に稲妻のように落ちてきた。
今まで見えなかった景色。
今まで撮れなかった瞬間。
それが見えるようになると言うのだろうか。
「ほ、本当に……」
「ん?」
「見えるようになるでしょうか…!私、変われるでしょうか…!」
「…………きっとなるさ、アンタが少し顔を上げたらね♪」
冴子の言葉にはゴミ箱を抱き締める。
「冴子さん…お願いします」
「まっかせといて!」
シャキンと言う音と共に抱えるゴミ箱の中に髪がハラリと落ちていった。
「うし!こんなモンでしょ!アタシ天才!」
「…………!」
目を開けたはいつもより開けた視界に心臓が高鳴るのを感じた。
全てが鮮明に見える、その事に不安も感じた。
「ちゃんさ、変わりたいって言ってたじゃん?」
「……は、はい…」
「最初の一歩なんて案外簡単に踏み出せるモンだよ、見た目だけなら今のアンタはもう昨日までのアンタと全然違うんだから!うん、可愛い可愛いっ!」
グリグリと頭を撫でた冴子はの手を掴んで弟の部屋へと連れていった。
「お前らちゅうもーくっ!!じゃーん!」
「……っ!」
背中を押され、ズイッと前に出されたに田中たちは注目する。
しばらく続いた沈黙にの心は不安で抉られそうだった。
やっぱり、私は私で何をしても変わらない。
そう思って俯き掛けた時に西谷の声が部屋に響いた。
「すげーっ!!!誰かと思った!か!?別人じゃねぇか!」
隣にいる冴子を見れば満足そうに笑っている。