第37章 僕たちのポートレート。②
ドーナッツを食べながら勉強を始めて一時間ほどした時だった。
漸くこの空間に少し慣れてきたの耳に大きな足音が聞こえた。
「龍ーーっ!?」
「げ」
「あっ!」
明らかに嫌そうな田中とは対照的に顔を輝かせる西谷。
なんだろう?と思った瞬間に勢い良く部屋の襖が開いた。
「ちょっとちょっと!!女の子の靴!あったけど?!龍!遂にアンタにも春が…?!」
ピッタリめのパンツにざっくりと胸元の開いたトップスに金髪。
田中にそっくりの彼女はを見つけると駆け寄って肩を掴んだ。
「田中龍之介の姉の冴子です!龍に春を運んで来てくれてありがとーっ!」
「え?え??…わ、私……?」
「ちげーって!姉ちゃん!は写真部!」
「写真部の彼女!」
「だーかーらっ!」
戸惑うを挟んで言い合いを繰り広げる田中姉弟を止めたのはやはり縁下だった。
「冴子さん、は田中の彼女じゃないですよ。写真部で今はバレー部の写真を撮って貰ってるんです」
「…!」
「なァんだ、そうなの?」
落ち着いた所で冴子もドーナッツを摘まむ。
食べてるその間も視線はからずっと離さずにいた。
「……………!」
見られている…!
気付いていたは勉強に集中出来ずペンはさっきから止まったままだ。
「ねぇ」
「………は、はいっ」
「ちょっとアタシの部屋来ない?」
「え……?」
顔を上げたの目の前には冴子のニンマリとした笑顔。
「えっと……」
「ホラホラ!いいから!」
手を引かれるまま田中の部屋を出ていってしまった。
「さん大丈夫か…?」
「姐さんだぜ!大丈夫に決まってんだろ!」
「それより縁下、お前もさっきを名前で呼んでなかったか?」
「ん?あぁ、仲間ならいいんだろ?」
縁下の含みを持った笑顔に理由がきっとそれだけじゃないんだろうなとその場で気付いたのは成田と木下だけだった。