第37章 僕たちのポートレート。②
「いきなりで驚いたけど似合ってるよ」
「うんうん!俺もそう思う!」
縁下の言葉に周りが同調して頷いた。
は恥ずかしくなって頬を染めた。
こんなに人に注目されたことも褒められたこともない。
どう言葉を返せばいいのかわからずにいた。
「何困った顔してんだ!こういう時はありがとうっつって笑えばいんだよ!」
「……!」
西谷の豪快な笑顔につられての口角が少し上がる。
「……あり、がとう」
蚊の鳴くような小さなのその言葉だったが、部屋にいたメンバーの心にしっかりと届いた。
そこから二時間勉強をしたあと、勉強会はお開きとなった。
「しっかり見直しとけよー」
「おー!」
田中の家を出るといつもより眩しく感じる太陽には目を細めた。
「…………」
冬の澄んだ晴れた空がハッキリと視界に入る。
冬の空は、こんなに綺麗だったのか。
「また来なよ!ちゃん」
冴子はの肩を叩いて歯を見せて笑った。
「…………はいっ」
少しだけ恥ずかしそうに視線を落としながらは冴子にそう返した。
すぅっと息を吸い込んだ。
澄んだ空気が胸一杯に広がる。
ここに来る時の気持ちと今の気持ちはまるで違う。
勇気を出して、来て良かった。
は心からそう思っていた。
「、送るよ」
「え、縁下くん……!」
自分のことを自然に名前で呼ぶ縁下に心臓が忙しく動き出す。
そう言えば先程も一回、呼ばれていたような。
「あ、ありがとう…」
「うん、行こう」
そこからは縁下と、二人で帰路を辿る。
「あの、縁下くん…」
「ん?」
「今日は、その、ありがとう…誘ってくれて…」
「俺らの方こそ助かったよ、のノートすごく綺麗だったし」
そう言って縁下は柔らかい笑みを浮かべた。
そんな二人の姿の後ろ姿が一人の男の目に留まる。
「あれって…縁下さんと……」
それは、合宿帰りの月島だった。
(あの人、確か…)
月島には縁下の隣を歩く彼女には見覚えがあった。
疲れた頭で何とか記憶を引っ張り出す。
そう、あれは一月前の出来事ーーーーー。