第5章 要するに彼女は俺を見てたって事になる件について。(影山飛雄)
「…ねぇ飛雄、少し公園で話さない?」
「え…あぁ……」
玄関先で立ち話も落ち着かないしね、と姉ちゃんは笑った。
こーゆー気遣いも男がしなきゃホントはダメだろ。
近くの公園は夕方だからか遊んでる子どもも居なくて、離れた所に犬を連れた人がいるくらいだった。
自然と並んでベンチに座る。
それだけで緊張してきた…クソ、こんなんじゃ全然、姉ちゃんに釣り合わない。
「飛雄は…学校でモテるでしょ」
「…ハァ?」
突拍子もない台詞に気の抜けた返事を返してしまう。
それを言うなら…姉ちゃんの方だろ?
「なんかね、今の飛雄生き生きしてる…バレーやってるとこもきっと凄くカッコいいんだろうね!そしたら女の子が放っとかないよね、皆好きになっちゃうよ…ちょっと妬いちゃうな」
「………」
俺が何も言わないからか、姉ちゃんはジャリっとヒールの先で地面をいじってる。
「ねぇ…私、また試合を」「姉ちゃん」
「?」
何かを言い掛けていたけど、無視して俺は続けた。
だって姉ちゃんがさっき言った事忘れたら困る。
「春校一次予選必ず勝ち残る…そしたら代表決定戦が仙台市体育館でやる」
「飛雄…」
「…もうあんな情けねー試合はしないから」
「観に行って…いいの?」
コクリと頷いて立ち上がる。
そんで姉ちゃんの正面に立つ。
これは俺からの宣戦布告だ。
「バレーやってるとこ観て惚れてくれるんだったら俺は姉ちゃんに観てもらわなきゃ意味がねー」
「え…?え?」
「ぜってー惚れさす!」
「え、飛雄?」
「帰ってカバン置いてランニング行ってくる!日程はまたメールする!」
「ちょっ!ちょっと飛雄!待って!」
走り去ろうとする俺の手を姉ちゃんは慌てて掴んだ。