第5章 要するに彼女は俺を見てたって事になる件について。(影山飛雄)
中学の時の、一番観られたくなかった試合を一番観て欲しくなかった人に観せてしまった。
トスを上げた先には誰もいないと言う恐怖はまだ俺の中に燻っている。
あれから俺は変われたのか?
「…飛雄っ!」
「!?」
音駒や梟谷との合宿の帰り道、家に入る前に後ろから声を掛けられた。
「久しぶり!元気だった?あら、また背が伸びたねぇ♪」
「、姉ちゃん…」
「…高校生なんだねぇ、すっかり大人の男らしくなっちゃって!」
「こっち、戻ってきたのか…?」
大きなキャリーバッグが見えた。
姉ちゃんは昔近所に住んでた人で、俺の憧れの人だった。俺よりも4つ年上で勉強もたまに見てもらった。
バレーも応援してくれてて、初めて観に来てと誘った試合があの試合だった。
「今大学も夏休みだからねー帰ってきたんだよ、飛雄は?」
「あ…合宿の帰り」
「合宿!……バレー?」
「あぁ…」
仙台の大学に行ってしまった姉ちゃんとは、あれ以来会ってなかったからバレーの話が重い。
思わず目を泳がせてしまうと頭をグリグリ撫でられた。
「私、ちゃんとわかってたよ」
「ちょっ…姉ちゃん!ヤメロって…!」
「飛雄はへこたれたりしない子だって」
「…!」
「…バレー辞めないでいてくれてホントに良かった」
あの試合の事は何も言わないけど、心配してくれてたんだって事はわかった。
顔を上げると綺麗な姉ちゃんの笑顔。
前より大人っぽくなったのはそっちだろ…。
「高校バレー楽しい?」
「まぁ…それなりに…」
「そう、良かった」
俺だって、聞きたい事たくさんある。
いつまでこっちにいるのか、
大学はどうなのか、
彼氏は、今もいないままなのか…。