第37章 僕たちのポートレート。②
の姿を見つけた西谷はの元へ勢い良く坂を駆け降りてきた。
「っ!お前も勉強会来るんだって?!さっき力から聞いた!」
「ひゃ……!」
抱き着かんばかりの勢いで肩を掴まれたは小さく声をあげた。
思わず持っていたドーナッツを落としそうになる。
「コラ!西谷!」
「ノヤっさん、いつからの事名前で呼ぶようになったんだ?」
追い付いてきた縁下たちがから西谷を引き剥がすと田中がふとそんな疑問をぶつけた。
「今!だってもうバレー部の仲間みてーなもんだろ?」
「……!」
にとっては呼吸が止まりそうになるほど驚いたし、泣きそうになるほどに嬉しい言葉を西谷はケロリと言ったのだ。
“仲間”
心の中でその言葉を繰り返す。
温かくて少し擽ったい、そんな言葉。
俯いたままだったが何処か照れて微笑んでいるようなの顔に西谷は目を奪われた。
と合流した烏野二年メンバーは一路、田中の家へと向かう。
「お邪魔しまーす!」
「チーッす!」
それぞれに挨拶をしながら上がり込むメンバーの最後尾に緊張でガチガチになったが続く。
玄関でペコリとお辞儀をしてパンプスを脱いだ。
「龍、今日姐さんはいねーの?」
「あー、車ねぇからどっか行ってんじゃねぇ?」
「マジかー!にも会わせたかったんだぜ!龍の姐さん!」
「あ、あね…さん?」
田中の部屋に通され促された座布団の上に座ったは首を傾げた。
「飲みモン取ってくる!」
「あ…!あの…!」
そう言って立ち上がった田中には持ってきた紙袋を突き出した。
「これ…、良かったら……」
「何だ?…………うおっ?!」
中身を確認した田中は声を上げて驚いた。
紙袋の中には大量のドーナッツ。
何種類あるのか一目ではわからなかった。
「何々?」
「すげー!量!うまそう!」
「随分多目に買ったね、さん(笑)」
田中の脇から縁下や成田、木下も紙袋を覗く。
「い、いくつ買ったらいいか…わからなくて……」
は真っ赤になって肩を竦めた。