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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第36章 僕たちのポートレート。①


それから二日後、常波高校との練習試合が行われる。

再び進化をしようと藻掻く烏野高校は中々噛み合わない歯車と個人技、さらには影山、日向、月島を欠いての試合に苦戦を強いられていた。


カシャ

カシャ


(田中くんのサーブ、絵になるなぁ……)

コートの隅をカメラを抱えては動き回る。
選手たちの邪魔にならないように細心の注意を払って。

(西谷くんのレシーブは…いつも綺麗に菅原先輩の所へ返る……)

カシャ


そのセットは結局常波に取られてしまう形で終わった。
が監督、コーチ陣に視線を向けるともう一セット行うことで話がまとまっていた。
まだまだ多い課題を何とかこの一ヶ月で形にするためにコーチも気合い十分と言った所だろうか。


は先程のセットで撮った写真を確認する。
菅原のトスの写真になったところでの手が止まる。

(あ…この菅原先輩の表情いいかも……)

「何?良い写真?」
「…ひゃああぁっ!」

突然背後から声を掛けられては大きな声を上げてしまう。

「す、菅原…先輩……!」
「ごめん(笑)そんなに驚くと思わなかった」
「い、いえ……すみません…大声出して…」

「凄い声が聞こえたけど大丈夫か?」

そこへ澤村も心配して顔を出す。
気付けば部員たちの視線もへと集まっていた。

注目されてしまっている。
の背中を冷や汗が伝った。

「だ…………」
「「だ?」」


は顔を真っ赤にして俯いた。
そして、

「だ、大丈夫…です!」

そう一言告げて体育館の外へと早歩きで向かった。


「部室から新しいビブス取ってきます」

それを見ていた縁下はそう言っての後を追った。

「…先を越されたか(笑)」
「スガ?」
「いや、何でもない」

カメラを確認していたの顔は微笑んでいるように見えた。
声を掛けたことであっと言う間にいつものオドオドした様子に戻ってしまったけれど。

前髪の奥の瞳が、優しく笑った。


(あの前髪…切ったら、)


菅原はそんなことをボンヤリと考えていた。




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