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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第36章 僕たちのポートレート。①


「さん」
「………!え、縁下…くん…!」

は部室棟の階段のところに座っていた。
縁下の顔を見ると恥ずかしそうに下を向いた。

「俺、新しいビブス取りに来たんだ。良かったら一緒に運んでもらえないかな?」
「……うん、手伝います、手伝う…」

体育館に戻りやすいようにそう誘ってくれているのだろう。
それがにもわかった。

そうじゃなかったら大した重さのないビブスを一緒に運ぼうだなんて縁下は言わないはずだ。


「あの…ありがとう、縁下くん…」

ビブスを半分抱えたは縁下にそっとお礼を告げた。

一瞬驚いた縁下だったが、すぐに柔らかな笑顔をに返した。

人付き合いがあんなに苦手なのことだ、自分にお礼を言うのだってきっととても勇気がいることだっただろう。

「あのさ、もし良かったら次の土曜日の練習の後に田中の家で勉強会をするんだ。それでさんも一緒にどうかなって」
「べ、勉強…会………?」

予想してなかった縁下の言葉には目をパチクリさせた。

「来週の月曜日に現国の小テストあるだろ?田中と西谷、毎回壊滅的な点数取るからその対策なんだ。それに…」
「………?」
「いきなり大勢の人に慣れるよりまず少ない人数からのがさんも気が楽なんじゃないかと思って」
「……!」
「どうかな?」


これは、自分を変えるチャンスなのではないだろうか。
いつまで経ってもオドオドして面と向かって人と話せない自分。
そんな自分に初めて差し伸べられた手。

もし変われたら、今までより良い写真も撮れるだろうか。

気持ちを言葉にすることが出来るだろうか。


「あ、もちろん無理強いはしない!」
「え、縁下くん…!」
「…?」
「私…行きます、勉強会…行く……」
「本当?!」

誘ったのは自分なのだがまさかOKを貰えるとは思っておらず縁下は驚いていた。


「あ、えと…!さん土曜日までバレー部顔出さないって言ってたよね?」
「うん…あの、写真の整理をしたくて……」
「じゃあ土曜日の午後に坂ノ下商店のところで待ってて、迎えに行くから」

はコクリと頷いた。



これは、自分を変えるための一歩。

は空を見上げて大きく息を吸い込んだ。



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