第36章 僕たちのポートレート。①
そのまま菅原に押されるがまま校門へ。
「あ、あの…っ先輩………っ!」
「ん?」
「わ、私…一人で帰れますので…菅原先輩も、お疲れでしょうし…!」
「んーそうだなぁ…」
菅原が諦めた、そう思ったは小さく息をはいた。
「じゃあさ、写真!」
「え」
「今日撮ったヤツちょこっと見せて欲しいから、一緒に帰っていいかな?」
そう言って爽やかに笑う菅原にの前髪の奥にある瞳は大きく見開かれた。
「わ…かりました………」
「ん!じゃあ帰んべ!」
少し前を歩く菅原の背中をチラリと盗み見る。
『写真を見せて欲しい』そんなことを言われたのは始めてだった。
ふわっと少し心が弾んだような、そんな感覚。
(承諾してしまった……でも、)
純粋に、嬉しかったのだ。
「すげーっ!これホントに旭!?」
「……はいっ」
「これ、ジャンプサーブの時だよな?いつもヘタレなのに写真だと凛々しいのな!」
のカメラに収められた写真を菅原は楽しそうに眺めていた。
「俺、こんな顔してバレーしてんだな…」
「…………?」
「ほら、いつもは中々見られないだろ?真剣にやるのは当たり前だけど、のめり込んでる!って感じだな」
「……そう、ですね」
菅原はカメラをの手元に返した。
「春高まで残るって決断して良かった」
あの時諦めていたら、今絶対後悔していただろう。
大地と旭と、皆と掴んだ春高への切符。
「さんはどうしてカメラを始めたの?」
菅原の何気ない質問にの胸はドキリとする。
どうしてカメラを。
自分がいいと思った物や風景や人を上手く褒められなかったから。
その瞬間を、切り取りたいと思った。
その物にとって、人にとって、輝いている瞬間を残したいと思った。
でもその全ての原動力は、
「……写真、好きだからです…」
小さな声でそう呟いた。
その答えに菅原は嬉しそうに笑う。
「やっぱりそうだよな、俺もバレー好きだし!何かを続ける原動力はシンプルなんだよな」
バレーが、
写真が、
好きだと言うこと。