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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第36章 僕たちのポートレート。①


「そんないきなり距離縮められたら戸惑うだろ、ホラ西谷は清水先輩たちの手伝いでもしてこい。田中に先を越されるぞ」
「何ィ!?龍ーッ!抜け駆けすんなーッ!!」

慌ただしくその場を立ち去った西谷を縁下はやれやれと言いながら見送った。

「ごめん、さん。うるさいけど悪いヤツじゃないから」
「……あ、はい!」
「……同じクラスなんだし普通に話してよ、って言うかこの時期まできて敬語だとさすがにヘコむから(笑)」
「あ…っ!うん…、ごめん…」
「いやいや、謝らないで!それよりよくこの話引き受けたね?さん、人前とか…その苦手そうに見えたから」

縁下のやんわりとした指摘にギュッとカメラを握り締める。

「人前は…今でも苦手、なの…」
「なら、どうして……」

春高代表決定戦。
対、白鳥沢戦のあったあの快挙の日。

全校を上げての応援団のその片隅ではカメラを構えて試合を観ていた。

コートの中はまるで別世界に思える熱気が、レンズ越しにも伝わってきた。
試合中の真剣な彼ら、試合後の歓喜の様子を観ていたら、夢中でシャッターを切っていた。





「…撮りたいって、思ったから」
「え?」
「頑張る皆さんの姿を、私…切り取りたい。私と違って…凄く、キラキラしてるから……」
「さん…」

そんなことない、君だって。
そう言おうとして縁下が口を開きかけた時に澤村の集合の合図が掛かった。

縁下がその場を離れた後、はその場にしゃがみこむ。

「思わず…恥ずかしい事を言っちゃったよ………はぁ…」


休憩後はサーブ練習、その前に武田先生から常波高校との練習試合の話があった。

(練習試合……)

の胸は小さく高鳴り始めた。




その日の帰り。

「さん!」
「!!…………あ、え、と……」
「菅原です!菅原孝支!」
「す、菅原先輩…………」
「うん、よろしく!さん帰りさ、もう真っ暗だし送るよ」
「え………………っ!?」

菅原の申し出に固まる。
初対面の先輩と一緒に帰るなんてとてもハードルが高過ぎる。
しかしあからさまに断るのも失礼になるのではないか。

しかし言葉を探している内に、さぁ行くべ!とは背中を押されてしまった。
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