第36章 僕たちのポートレート。①
正直言って気が重い。
今までの人生で無縁だったバレーにいきなり関わる事になって、苦手な人付き合いもいきなり大勢とすることになった。
「はぁ…」
はカメラのチェックをしながら小さく溜め息をついた。
武田先生の熱意に押し負けた形で決まったこの話。
部員たちの前で紹介されただけなのにすでに心底疲れてしまった。
でも、本気で嫌だったわけじゃない。
「あの、」
「……はいっ!」
「今からレシーブ練習が始まるから流れ球に気を付けてね、私も注意して見るようにする」
「……!!」
に声を掛けてきたのは清水。
一年しか違わないと言うのに溢れんばかりの美貌と色気には思わず返事を忘れてしまう。
「えっと、さん…?」
「あ……!す、すいません、わかりました!」
ペコリと頭を下げては体育館の隅へと移動した。
あんなに綺麗な人は初めて見た。
それと同時に自分の平凡さを痛感する。
人と関わる事が苦手で伸ばし始めた前髪が目に掛かる位になって漸く少し落ち着けていた。
後、真っ直ぐ人を見つめられるのはーーーーー
カシャ
カシャ
ーーーーーこのレンズ越しにだけだ。
「さっきとはまるで別人だなぁ」
「……やっぱりスガにもそう見えるか?」
「うん、さっきはこう、オドオドしてた感じだったのに…今はなんかカッコいい!」
カメラを向けたの真剣な顔は一瞬ドキリとするほど凛々しい。
撮った写真を確認する様子も真剣そのものだった。
「良い写真、撮れた?」
「…!!え、縁下くん……」
「なんだ!力の知り合いか!」
縁下の対応をどうしようかと思っていたところに真横から大きな声が聞こえ、思わずは肩をビクつかせた。
「西谷!驚かせたらダメだろ?」
「おーワリィ!俺は西谷夕!烏野の守護神だ!よろしくな!!」
「は、はい……お願い、します…」
「なんだよ、同じ二年なんだから敬語いらねーって!」
西谷の眩しいほどの笑顔に反しては
どんどん縮こまっていく。
見かねた縁下が救いの手を差し伸べた。