第36章 僕たちのポートレート。①
春高出場を決めた烏野高校。
全日本ユース強化合宿の招集がかかった影山。
さらに宮城県の有望な一年生を集めた言わば疑似ユース合宿に呼ばれた月島とそこへ乗り込んだ日向。
その三人を一時欠くバレー部に今日、新しい同志が加わる。
「…と、まぁ日向くんはそう言うわけで向こうの合宿に参加することになりました」
ため息混じりで武田先生が日向の事情を部員たちに説明する。
「それから、春高に向けて写真部に協力して頂く事になりました!学校の宣伝にもなりますからね」
「写真部…?」
「そんな部あったか……?」
「入って」
武田先生の話にざわつく部員たちだったが、遠慮がちに体育館に足を踏み入れた一人の女の子に注目する。
「さん、二年生です」
大柄な部員たちの視線を受けて縮こまっている彼女は首から一眼レフカメラを掛けていた。
目に掛かる程の長めの前髪のせいで顔がよく見えない。
部員たちは不思議そうに彼女を見つめていた。
「春高までの練習や練習試合、もちろん春高の舞台でも彼女には君たちの勇姿を撮ってもらう予定です」
「あ、の…よろしくお願いします…!」
ペコリと頭を下げたの肩に澤村がポンと手を置いた。
「主将の澤村です、こちらこそよろしく!」
「大地~そうやってすぐ触るのセクハラだべ?」
「お、おい、スガ!変な事言うな!さん、困ったことがあったら俺に言って?それかマネージャーの二人にでも」
「あ、はい…!」
俯いたままは頷いて返事をする。
他の部員たちを練習へ戻した後思い出したように澤村は口を開いた。
「後一年が三人いるんだけど今それぞれ別の場所の練習に呼ばれててね、帰ってきたらまた紹介するよ。ここにいる奴らの事は徐々に覚えてやって」
「……はい」
「そんなに気負わなくて良いよ、楽にして」
小さく返事をするに澤村はそう声をかけて練習へと戻った。