第33章 時間の隙間は埋めるのではなく飛び越える。(東峰旭)
「……嬉しくないって、言われた」
それは突き飛ばされたお腹よりもずっと痛い。
こめかみを強く殴れた様な感覚だ。
小さい頃から後をついてきて懐いてくれていた幼馴染みからの初めての拒絶。
「……どうしよう、俺…」
「可愛いなぁ、必死なんだろ」
「スガ…」
「あの子、お前に追い付こうって必死じゃん」
「え…?」
青い顔をして焦っていた東峰の肩を叩いて菅原は笑った。
追い付こうと必死ってどう言う意味なんだろう。
言われた意味がわからず菅原を見つめるとハァーっと豪快に溜め息をつかれてしまった。
「まだわかんないって顔してんなー、あの子中三なんだろ?」
「う、うん」
「さっき言ってたじゃん」
『三年間、また違うのに』
「この意味、お前わかってる?」
「…………!」
菅原の言葉は東峰を答えへと導いた。
三年間。
同じ中学に通っていてもの三年間に東峰はいない。
そして同じ高校に通おうとしているのこれからの三年間にも東峰はいないのだ。
『遠いだけじゃんか!』
「…………俺、」
「探しに行けよ、大地いいよな?」
「このまま練習続けたって集中出来なそうだしなぁ」
「そゆこと」
やれやれと言って笑う澤村。
ニシシと肩を竦めて笑う菅原。
二人の気遣いに胸が熱くなる。
「俺、行ってくる…!」
「おー、解決するまで帰ってくんなよー」
体育館を後にした東峰の背中を澤村と菅原は穏やかに見送った。
「練習っつっても俺らは体動かしにきてる感じだもんな」
「俺は真剣にやってるぞ」
「俺だってやってるよ」
「大地さん、スガさん!サーブ練入りますか?」
背後から新主将、縁下の声が聞こえる。
「「もちろん!!」」
二人は何事もなかったように練習へと戻っていった。
この体育館で、こうしてバレーが出来るのもあと僅か。