第33章 時間の隙間は埋めるのではなく飛び越える。(東峰旭)
三年生が卒業を控えた三月。
烏野高校男子バレー部体育館に大きな声が響き渡った。
「ーーー旭っ!!」
!?
体育館にいた全員が一斉に扉の方へと視線を向ける。
立っていたのは満面の笑顔の女の子。
「ちゅ、中学生…?」
「今、旭って…言ってた?」
「俺も…そう聞こえた」
「いた!旭っ!!」
「えっ!?あっ…ちゃん…!?」
と呼ばれた少女は東峰を見つけると駆け寄って思い切りダイブ。
突然の出来事だったが東峰はしっかりとその小さな体を受け止めた。
「な、なんでここに…?」
「旭に会いに来たの、今日は授業が午前で終わりなんだ!もう卒業だから!今度入学するんですって言ったら入れて貰えた!あ、旭の名前も出したけど」
「えぇ?!」
クリンとした大きな瞳をはためかせながらは東峰を見上げて言った。
「なんだ、旭も隅に置けねーなぁ」
「ス、スガ…この子は俺の幼馴染みで」
「………む」
東峰のその一言は眩しいほどだったの笑顔をあっさりと曇らせた。
いつもこうだ。
近付いても近付いても、一歩下がろうとする。
こっちはどう足掻いたって縮まらないこの『年齢』という距離を何とかしたくて仕方がないって言うのに。
「三年間、また違うのに…幼馴染みなんて…」
「ちゃん?」
「幼馴染みなんて全然嬉しくない!!!遠いだけじゃんか!!」
「ぐえっ!!」
そう叫んで今までくっついていた東峰のお腹を思い切り突き飛ばした。
そしてそのまま、体育館を飛び出した。
「…旭、大丈夫か?」
「…う、うん」
見兼ねた澤村が声を掛けると東峰は弱々しく笑顔を見せた。
「なんか台風みたいな子だなぁ、西谷みたいだし」
「スガさん!俺も台風って事スか!?うぉぉ!ハリケーン!!かっけぇぇ!!」
「すげー!ノヤっさんかっけぇぇ!!!」
「いや、ハリケーンは竜巻な」
菅原の一言に盛り上がる西谷と日向だったが、縁下に冷静に突っ込まれる。
「おお!竜巻も良いな!力!!」
「あー…うん、もう何でもいいや」
だが、その突っ込みも西谷の前には意味を持たない。