第33章 時間の隙間は埋めるのではなく飛び越える。(東峰旭)
商店街、通っていた中学校、駅前の広場。
のいそうな場所を走り回ったけれど東峰はその姿を見つける事が出来ずにいた。
「くそ…後は………」
小学生の頃、一緒に遊んでいた公園しか思い付かない。
改めてこうして思い返すととの思い出はその頃で止まっている事に気付かされた。
小学三年生のちゃんまでしか、俺はわからない。
今、何が好きで
何に夢中になってるのか。
俺は何にも知らないんだ。
唇を噛み締めたまま東峰は再び走り出した。
唯一の思い出の残る公園を目指して。
公園に辿り着いた時には辺りはすっかり夕焼け色に染まっていた。
公園内をぐるりと見回すとブランコに1つの影。
だとすぐにわかった。
だが、東峰は足を止めてそのまま見入っていた。
柔らかそうな髪は夕日を浴びて光り、時折フワリと揺れていた。
俯き加減で地面を見つめるその瞳を長い睫毛が隠す。
自分の知っているはあんなに綺麗だったろうか。
記憶の中のとは何一つ一致しない、彼女はもう少女ではなく女性なのだと思い知らされる。
「ちゃん…」
「!………旭、どして、」
名前を呼ばれ振り返ったは大きな目を更に大きく見開いて驚いていた。
まさか、旭がバレーをほっぽり出して探しに来てくれるなんて。
「…の事探しながらさ、色々思い出そうとしたんだ。が好きな場所は何処かとか、どんな店によく行ってるのかとか」
「………」
「でも俺、ここしかわかんなかったよ」
今ならの言葉の意味がわかる。
「今のちゃんが何を好きで、何に夢中なのか…教えて?」
少しずつで良いから、離れてしまった距離を埋めさせて欲しいんだ。
「ーーっわ!?」
ドンっという衝撃と共にブランコからは飛び下りてそのまま東峰に飛び付いた。
「何が好きで何に夢中かって、そんなの昔から変わってない」
「え?」
「旭だよ」
好きで、夢中。
「えっ…//あ、えぇ?!///」
満面の笑みを浮かべては東峰に抱きついた。
少しずつなんて、待ってられない。
今すぐ距離を飛び越えさせて。
END.