第29章 ガトーショコラで治らない彼の機嫌を治すには。(月島蛍)
お、男の子ってこんなにいい匂いするものなの…!?
異性に抱き締められた経験などない私は蛍の腕の中で動く事も出来ずただ固まっているしかなかった。
「僕の機嫌、今度はお菓子じゃ治らないから…」
「!!///」
耳元でそう囁かれた後、至近距離で見つめられる。
恥ずかしいのに目を離せない。
そして蛍の綺麗な指がそっと私の唇を撫でた。
「の口から…ちゃんと聞かなきゃ機嫌は治さない」
「聞くって…何を…」
「僕から目を離しませんって、僕だけが特別だって、言って」
「……////」
目を丸くして驚いてしまう。
顔もきっと真っ赤。
片方の口角を上げて自信たっぷりに笑う蛍は未だ私の唇を親指で優しく撫でている。
特別って…そんな事。
あぁ、私は今更気付かされてしまったのか。
クールで意地悪ででも本当は熱い、そんな彼が昔からずっと特別だったって事に。
会えなかった一年、想っていたのは蛍だけじゃないんだよ。
私もずっと蛍の事を考えていた。
その度に、きちんと挨拶出来ずに別れた後悔が募っていた。
「わ、たし……もう蛍から目を離さない、傍を離れない、ずっとずっと…蛍が特別…!」
目をぎゅっと摘むって言い切った。
もう、心臓が飛び出してしまいそう。
「…上出来」
「け、い……!!あっ…!」
小さくそう聞こえて目を開けた瞬間、唇に温かな感触を感じる。
それが蛍の唇でキスしてるんだと理解するまでに少し時間が掛かった。
理解してからは一気に熱が唇に集中する。
啄むようなキスから徐々に深いものへと変わっていく。
「んぅ…」
息つく暇もない程のキス。
酸素を求めて口を少し開くとスルリと舌を絡ませられ、再び苦しさに襲われる。
でも、ただ苦しいだけじゃない…体が溶けていくような心地良さがあった。
「…なんて顔してるの」
「…はぁ……」
キスからやっと解放された時には体を力が入らず、蛍の肩にもたれる形で私は息を整えた。
「これで、許してあげる」
「……い、意地悪…///」
背中に優しく手を置かれ、頬にキスをされる。
小さなリップ音が聞こえて、恥ずかしさが押し寄せてくる。