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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第29章 ガトーショコラで治らない彼の機嫌を治すには。(月島蛍)


私が言葉に詰まっていると蛍は手を掴んだまま、歩き出した。
少し速い歩みに私は着いていくのがやっとだった。

見覚えのある景色が広がる。

蛍がピタリと足を止めた場所は間違いなく蛍の家の前だ。


「僕の話、聞きたいなら上がって」

「え、と…」

「…聞かないなら、このまま帰って」

「蛍…」


私の顔を見るその瞳は冷静に見えて奥の方に熱を隠してる、そんな瞳だった。

答える代わりに、蛍の手を握り返す。


「…これ、帰らないって事?」

「……うん、蛍の話ちゃんと聞きたい」


あの時みたいに後悔しないように。


ポケットから鍵を出して玄関を開ける。
その間も蛍は私の手を放そうとはしなかった。

そのまま一緒に階段を上がって部屋に通される。

色んなゲーム機の揃う蛍の部屋に昔はよく遊びに来ていたのに今はこんなにも緊張してしまう。


「あの、おばさんは…?」

「母さんは出掛けてる」

「そっか…」


静かな家、その一室に二人きり。
心臓がうるさいくらいになってる。
どうか、蛍に聞こえていませんようにと私は願うばかりだった。


カーペットの上に二人で並んで座ると蛍が口を開いた。


「…さっきに言われた事、間違ってないよ」

「え?あ……」



“蛍は私が誰かを構うのが嫌なの?”



そうだ、とんでもない質問を私は彼にぶつけていたんだった。
その答えを今貰った気がするけど…蛍は何て言った?

恥ずかしさのあまり俯いた顔をすぐに上げ蛍の顔を見る。


「僕は、が僕以外の誰かに世話焼いてるのも笑ってるのも…気に入らないよ」

「け、い…///」

「離れてた一年間…今頃他のヤツと仲良くしてるんじゃないかとか、彼氏出来てるんじゃないかとか、考え出したらキリがなかった」

真っ直ぐに私を見つめたまま話す蛍に私は息を飲んだ。


「こうしてまた会えたのが偶然だったとしても…その偶然を今度は手放さない」


カーペットの上に置いていた私の手の上に蛍の手が重なる。
さっきよりも、ずっと熱い手だった。


「逃げようとしてもムダだから、もう僕は…を見つけたんだからね」

「蛍…ひゃあっ!///」

突然腕を引かれそのまま蛍の腕の中にスッポリと収まる。
ほのかに香るのはシャンプーなのか、柔軟剤なのか。



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