第29章 ガトーショコラで治らない彼の機嫌を治すには。(月島蛍)
「次、僕以外に振り回されてたらこれじゃ済まないからね?」
「…!///」
背中の蛍の手が、シャツ越しに下着のラインをなぞる。
驚いて顔を見ると、勝ち誇った顔で蛍は私を見下ろしていた。
「後、明日から二人っきりで影山に勉強教えるのもなしね」
「影山くん困らないかな…」
「考えてないわけじゃない」
「蛍…?」
次の日、昨日と同じ様に放課後影山くんが教室へとやって来た。
「昨日用事間に合ったのか?今日は大丈夫なのか?!」
「あ、えっと…」
来るなり勢い良く凄まれて目が泳いでしまう。
「今日から君の勉強は僕ら三人で見るから」
「「えっ?!」」
私と忠の驚いた声が響く。
「山口と月島も…!?」
影山くんも意外な答えに忠を見ていた。
そんな私達を気にする様子もなく蛍は淡々と続ける。
「但し一時間だけね、時間決めた方が集中出来るデショ」
「お、おう…」
「それから…」
席についた影山くんと忠が揃って蛍を見上げる。
私も椅子に座ろうとしたけれど蛍に腕を引かれて抱き寄せられた。
「もう僕のだから、手、出さないでね」
「「!!」」
なんて事を言い出すんだろう…!
影山くんと忠に留まらず、クラスに残っていた人達も驚いて蛍を見ていた。
「わかったらさっさと始めるよ」
私から手を放すと蛍は席についてノートを開く。
「も早く座ったら?」
「…///」
言われた通り椅子に座ってノートを開いたものの、この日の勉強なんてほとんど頭に入って来なかった。
この先もこんな風に私は蛍に振り回されていくんだろうな。
でも…それでも私はきっと。
(目を離せないんだよね…惚れた弱味なんだろうなぁ…)
チラッと蛍を見ると目が合った。
ニヤリと笑みを浮かべていて、なんだか心を見透かされてる気がして。
私は教科書で顔を隠すしかなかった。
END.