第29章 ガトーショコラで治らない彼の機嫌を治すには。(月島蛍)
入学式からしばらくした土曜日。
気晴らしにコンビニまで行く途中で蛍と忠にバッタリと遭遇した。
「あれ、二人とも休みの日でも仲良いね!どこか行くの?」
笑ってる忠の横であからさまにゲッと言わんばかりの顔を見せる蛍。
いくら私でも傷付くんだけどな…。
「これから部活なんだ、ミニゲームするんだよ」
「山口!」
「部活ってもしかしてバレーボール?」
「良かったらちゃん観に来る?」
「え、いいの?部外者なのに」
「もちろん!」
忠の返事を聞いた後、チラリと蛍の顔を見る。
「……勝手にすれば」
「……あ、うん…」
一言そう言うと彼は先に歩いて行ってしまった。
「ねぇ忠、私蛍に…嫌われちゃったのかな?」
もしかしたら何も言えずに転校した事を怒ってるのかもしれない。
それを思うと胸が痛む。
今更謝った所で余計に怒らせてしまう可能性だってある。
「ちゃん、それはないと思うよ」
「…え?」
不安げに顔を見上げると忠は自信有りげにニッコリと笑っていた。
「でも…」
「ちゃんが転校してからもずっとツッキーはちゃんの事考えてたと思うよ、事ある毎に会話に名前出てきたから」
「え……」
忠の言葉に顔が熱くなる。
熱を冷まそうと両手で頬を押さえた。
「そのペースで歩いてると遅刻になるんだけど」
ふいに前方から声が掛かる。
振り返って呆れている蛍の顔をマジマジと見てしまう。
「…なに?」
「なんでも、ないです…//」
何だか急に蛍が眩しく見えてしまう。
その後も蛍を直視出来ないまま学校の体育館に着いたけど、その間忠とどんな会話したのか私はほとんど覚えていなかった。
体育館に着いて中を覗くと既にいた人達が体を動かしている。
「あ…!」
その中で知った顔を見つけた私は思わず声をあげてしまった。
「影山くん…!?」
「お前……!?」
中学三年生の一年を過ごした学校での友達。
「影山くん烏野受けてたんだね!知らなかった!」
「お前も…同じだったんだな」
そんな私達を見る蛍の機嫌が最高に悪くなっていた事に気付いたのは忠しかその場にいなかった。