第25章 誰にも渡したくないって気持ちは好きって事。(影山飛雄)
「そうだね、さんとなら付き合いたいかも」
「「「えぇっ!!??」」」
山口と日向とそしての驚いた声がシンクロする。
月島は構わずポンとの肩に手を置いた。
「つ、月島くん…?」
驚き過ぎて言葉が出ない。
さっきまでそんな素振りなんて全くなかったのに、突然何を言い出すのだろう。
山口と日向も驚いたまま言葉を失っていた。
「だってさん彼氏いないデショ?ならいいかなって」
そう言いながら月島はチラリと影山の顔を見る。
なんて顔をしてるんだろう。
焦りか、怒りか、戸惑いか、何とも言えない顔をして睨むその顔に月島は笑いを堪えるのに必死になった。
(面白…)
「さんは僕の事嫌い?」
「えっ?!いや…あのっ…!私は…!!」
普段の月島なら絶対にしないような発言。
畳み掛けるようにににじり寄る。
だが、煽られるだけ煽られた王様がここで遂に爆発した。
「ダメ、だッ!!!」
歯切れの悪い一言を大声で叫んだ後、の手首を掴み月島から引き離す。
そしてそのまま何も言わずズンズンと歩いてその場から離れていく。
「…ツッキー、カマかけたの?」
会話の途中から薄々感付き始めた山口は月島に確認する。
「そう、その甲斐あって王様の面白い顔見れたデショ?」
「うわぁ…」
「何?影山アイツ何なの?」
「わかんないヤツはいいよ」
離れていく二人の背中を見ながら月島は小さく溜め息をついた。
バカにされたと騒ぐ日向は山口が宥めていた。
(ここまでお膳立てして何もなかったら真性ヘタレだけどね)
その頃、影山とは少し離れた公園まで来てやっと足を止めた。
「かげ…っハァ…影山くん…歩くの、ハァ…やっぱり速いね……ハァ…」
「悪い…」
影山の歩幅にが合わせられる筈もなく、早歩きの影山に付いていくには走るしかなかった。
息も切れ切れだと言うのには影山に文句の一つも言わない。
冷静になってきた影山はここでやっとの手首を放した。
白く細い手首にうっすらと赤い跡が残っていた。