第25章 誰にも渡したくないって気持ちは好きって事。(影山飛雄)
「彼女なんて今は必要ねー、そんな事に時間割いてる場合じゃねーだろ」
いつもの練習の帰り道一年生でまとまって歩いていた時の事。
山口の何気ない振りから始まった恋の話。
そこでの影山のこの一言は一年生マネージャーの心をあっという間に粉々にした。
影山と同じ北川第一出身のは当時からずっと影山を見てきた。
部活内で浮いた存在になってしまった時も、影山の気持ちをずっと案じていた。
「も烏野か、なんか安心した」
入学して間もなくお互いの存在に気付いて言われた影山のこの言葉がにとってどれ程嬉しかった事か。
(そんな事…か……)
バレー中心の影山の生活に少しでも自分の存在があるんじゃないか、そんな期待も少なからずしていたのは確か。
でもそんな隙間は微塵もなかった。
落ち込んだ姿を周りに見せまいとは一年生の輪から少し離れて歩く。
「スゲー!なんかカッケー言い方!!」
影山の発言に無邪気に反応する日向。
山口もの様子には気付いていない。
気付いたのはこの男だけだった。
「王様はバレーバカだから、別にさんがどうのってわけじゃないと思うケド」
「月島くん…っ」
歩幅を緩めいつの間にか隣に並んでいた月島は進行方向を見つめたままにそう言った。
「自分の側から居なくなったら困るくせにね」
「え……?」
吐き捨てるようにそう言った月島はニヤリと笑う。
これは何か企んでる顔だ、は直感でそう思った。
「ねぇ、ツッキーは?彼女欲しいと思わないの?」
振り返った山口が月島に問う。
誰もが否定の言葉が返ってくるもんだと思い込んでいた。
隣を歩いていたもそう。
だが、月島からは予想を遥かに越えた返事が返ってきたのだ。