第24章 シャワーの後で抱き締めさせて。(及川徹)
翌日の部活休憩中、私はバレー部マネージャーの先輩達に呼び出された。
呼び出される様な事はしてない筈なんだけど。
休憩中と言えどドリンクの補充などやらなければならない事は多いのに。
冷水機にいるから先輩達が来てくれないだろうか、なんて思ったけどすぐに無駄な期待だと考え直す。
後輩の方から来いと言うのがあの人達の威厳の表し方なのはもうとっくにわかっているのだ。
ドリンクの補充だけ急いで済ませ先輩達の元へ向かう。
「早く来ないから休憩終わっちゃうじゃない」
「…すみません」
「ねぇ、昨日の部活終わり及川くんと二人で体育館に居たって聞いたんだけどホント?」
呼び出された内容はそれか。
あまりのくだらなさに脱力しそうになる。
「部誌のチェックをしてもらってました」
昨日から及川先輩がチェックする事になったと先輩達に説明をした。
もちろん、余計な事も喋っていないとも。
「だったら今日から私達が部誌を見せに行くわ」
「……はぁ」
今まで殆んど書いた事もないのにいきなり書くと言うのか。
それでも仕事を分担しようとする気持ちは有り難く受け取ろうと私が頷いた時だった。
先輩の口からそんな私の思いをぶち壊す言葉が飛び出した。
「書いたら私達の所へ持って来て、それを私達が及川くんに持って行くから」
鈍器で殴られた様な衝撃だった。
この人達はやっぱり簡単に変わりはしないんだな…。
引っ叩きたくなる衝動を抑え、静かな声でわかりましたと一言告げて私はその場を立ち去った。
部誌を見せに行く手間が省けるなら良いじゃないかと思うようにしたけれど、何となくモヤモヤした気持ちはその後もずっと晴れずにいた。
その日の部活後、言われた通り私は着替えている先輩達の元に部誌を届けに行った。
私から部誌を受け取ると先輩達は足早に更衣室を出て行った。
更衣室には香水の匂いが立ち込めていて気持ちが悪い。
換気をしようと窓を開けると外から声が聞こえてきた。
「あ、及川くん!今日の部誌のチェックお願いしまぁすっ♪」
「あれ、今日はちゃんじゃないんだ」
媚びるような甲高い声、私は聞いていたくなくて窓を閉め体育館へと戻った。