第23章 一足遅れの春がとても暖かい事を僕は知っていた。(松川一静)
駅までの道のりは普段の帰り道と何も変わらず、いつもの四人の姿だった。
加奈子を除く三人は普段通りに、泣く事なく加奈子を送り出そうと決めていた。
「電車来るまであと二十分もあるし…ここでいいよ、皆…」
「何言ってんの、加奈子!一緒に待つよ」
「ううん…その内しんみりしてきちゃいそうで…だからここで」
加奈子は顔は笑っているが三人には何処と無く無理矢理に作られた笑顔に見えた。
「そっか…うん、わかった」
「一生の別れじゃないんでしょ、二人ともそんな顔しないの」
寂しいと言うおもいが溢れそうになったと加奈子だったが、松川の一言に再び笑顔を見せた。
「加奈子、向こうでも元気で…夏には帰ってくるんだろ?」
「松川くん、今までありがとう!夏休みには帰るから!また皆で遊ぼうね…!」
「うん」
「明日から加奈子がいないなんて変な感じだよな…」
加奈子と松川が話しているのを見つめながら花巻がポツリと呟いた。
それは隣にいたにしか聞こえない程の小さな声だった。
「それは花次第なんじゃないの?」
「え?」
思いもよらない返答に花巻はの顔を見る。
「ここで加奈子に何にも伝えず別れたりしたら…あたしぶん殴るからね」
「おま…っ///!いつから知って…!//」
自分の気持ちを知られていたなんて全く気付いていなかった花巻は途端に慌て出す。
そんな風に照れたりするんだね。
あたしじゃそんな顔はさせられないんだろうな。
は笑って花巻の背中を叩いてから加奈子に声を掛ける。
「加奈子!!離れてたってあたし…ずっと加奈子の事大好きだから!」
「…」
「東京でいじめられたら直ぐに呼べよな!直ぐに飛んでくからね!!」
「…うん、ありがとう……っ」
満面の笑みを見せは加奈子に抱き付いた。
「加奈子、もっと話していたいんだけどさ…この後行くところあって、あたしそろそろ行くな?」
「あ!うん…も何かあったら連絡してね」
これからの未来へ踏み出す親友の姿がにはとても輝いて見えた。