第23章 一足遅れの春がとても暖かい事を僕は知っていた。(松川一静)
「そっか…」
は空を見つめたまま一言そう答えた。
なら、私に出来る事は一つしかない。
大好きなアイツの背中を押す事だけだ。
「松、さんきゅ!話してたら落ち着いた、加奈子と花に謝ってくる」
そう言っては松川に歯を見せて笑った。
「」
「ん?」
「たまに振り返るのも悪くないと思うけど」
「んん???おぉ…ありがと」
首を傾げたの頭の上にははてなマークが飛んでいるのだろう。
「ふっ…あれは意味分かってなさそ…」
が出て行ったドアに向かってポツリと松川は呟いた。
図書室を出たは真っ直ぐに教室へと戻る。
そしてそのまま加奈子の席へ向かった。
「加奈子!ごめん!」
「…?」
「ウジウジしてて私らしくなかった!加奈子のやりたい事、私応援する!会えなくなるワケじゃないもんな!」
「……!うん、ありがとう…」
その様子を花巻は安心した様子で笑って見守っていた。
それからはいつも通りの四人に戻った。
いつも通りに昼食を一緒に取り、放課後には時々寄り道をして帰る。
気付けば、卒業式の日を迎えようとしていた。
「!」
「、おはよう」
「おはよ、やー晴れたなー!」
「そうだね!」
加奈子は今日のこの卒業式の後、東京へと旅立ってしまう。
は寂しさを紛らわす様に明るく振る舞った。
それは加奈子も同じだった。
「おーす!」
「花、松!おはよう!」
「おはようっ」
卒業式は予定通りに行われた。
体育館にはすすり泣く声があちこちから聞こえていた。
加奈子の様に県外に進学する生徒も多いのだ。
「あれ?岩泉、及川は?」
「あっちで後輩に囲まれてる」
「あぁ…なるほど」
式が終わり花巻と松川はバレー部の面子と話していた。
そんな中、が二人を迎えに来る。
「花、松、加奈子行くって言うから…送りに行こう」
「もうそんな時間かよ…」
「じゃあ岩泉、また」
「おう」
に並んで加奈子の待つ校門へと向かう。