第23章 一足遅れの春がとても暖かい事を僕は知っていた。(松川一静)
「に昨日話した時もあんな様子で……」
「や…そりゃさ…ビビるって、俺も……マジか…」
そして花巻もの思った通りの反応を見せていた。
「ずっと言えなくて…黙ってた私が悪いよ、二人もごめんね…」
「と加奈子の関係はこんな事じ壊れないでしょ?大丈夫、俺ちょっとアイツ追い掛けてくるから花巻ここ頼むな」
「お、おう……」
松川は開いたままだった弁当をしまい屋上から出て行った。
確かに加奈子の東京行きは驚いたけど…きっとの頭にあるのはそれだけじゃない。
松川はの姿を探して校内を回った。
「あ…及川、見てない?」
「ちゃん?あ、さっき図書室に入ってくの見たけど」
「わかった、サンキュ…あ、これ悪いけど俺の席に置いといて」
「え?!ちょっと…まっつん!!まっつんてば!!」
持っていた弁当箱を及川に押し付けて松川は図書室へ向かった。
もし一人で泣こうとしているんだったら俺はそれを許さない。
は悲しい時に悲しいって言わないから、気付いてあげないといけないんだ。
顔で強がって心で泣いてるをずっと俺は見てきた。
「トイレじゃなかったっけ?」
「…松………」
「探したよ」
甘えて欲しいのにコイツはそれをしないから。
図書室の一番奥の席には座って窓の外をぼんやりと眺めていた。
松川が声を掛けると驚いて目を開いたがその顔はすぐにまた曇ってしまった。
「ねぇ、…ホントは何に苦しんでんの?」
「………!」
「これ、地雷だったりする?」
の隣の席に座って頬杖をつきながら松川が尋ねた。
「ホント…松には敵わないっつーか……」
初めは強張っていたの顔が次第に緩み出す。
松川の問いに諦めたような笑みを見せた。
「加奈子の話聞いた?」
「東京に行くって話?聞いたよ」
「花、どんな顏してた…?」
松川は見たままの花巻の様子をに伝えた。
それがを傷付けるとわかっていて。