第3章 現実は小説より奇なりなんて事はそうそうない。(及川徹)
「お前がしっかりしねぇと周りに示しがつかないだろーが!」
「岩ちゃんがその分しっかりしてるんだから問題ないでしょ」
ねっ?と笑い掛けても相手にしてもらえず…。
ちゃんと岩ちゃんも好きだよと付け加えたら叩かれた。
放課後の部活後に事件は起きた。
教室に忘れた課題を取りに行った帰り、課題に必要な本を探しに図書室へ向かった。
部活のある生徒のために遅くまで図書室を開けておいてくれる事は有りがたい。
自分しかいないと思っていた室内に小さな声が響いた。
「及川先輩が…好きです……」
ん?
今何て聞こえた…?
確かに俺の名前だった。
でも当の及川さんはここにいますよ。
本人の居ないところで告白をする、そんな不思議ちゃんは一体どんな子?と本棚の陰から覗いてみた。
現実は時に小説より凄いことが起きる。
みたいな諺なかったっけ?
「………ちゃん?」
「!!!!!?」
呼び掛けてみると、今まで見たことのないような顔でこっちを見た。
慌てて逃げ出そうとする彼女の腕を咄嗟に掴み捕まえる。
このまま帰したんじゃ気になって家でおちおち課題も出来ないよ。
「離して下さ…」「ねぇ」
言葉を遮ると彼女の肩が小さく跳ねた。
「ちゃんは俺が好きなの?」
「……!////」
「ねぇ…教えてよ」
ジリジリと後退りをする彼女を本棚に追い詰める。
1歩、次は半歩と距離を縮める。
赤くなっている顔が可愛い…。
あぁ、このまま食べたい。
何て妄想が膨らみ掛けていると、突然胸に衝撃が来る。
「ったた…ちゃん?」
ちゃんは両手を前に突き出して僕の胸を押し返す。
「好きですよ!初めて試合を見た日からずっと好きでしたよ!!」
「え…?」
「格好良くてドキドキして、ずっと目で追ってましたよ!」
「ちゃん…///」
勢い良く話し出した彼女の声は静かな図書室に良く響いた。
言い終わった後は静かに息を整えている。
「じゃあ…どうして今まで……」
昼休みのように決してスキンシップを許さなかったのはどうしてなんだ?
彼女の息が整うのを待って目で答えをせがんだ。