第3章 現実は小説より奇なりなんて事はそうそうない。(及川徹)
「言えるわけないじゃないですか……私はまだ1年で、特に何が秀でているわけでもないただの後輩ですよ?…青葉城西の及川徹はスターなんですよ…」
泣きそうな顔をして俯くから、思いっきり抱き締めた。
良かった、シャワーしっかり浴びてきて。
「せんぱ…!」「ちゃんはさ」
言葉を遮る、その2。
「他の女の子が出来ないことを十分してるよ?」
「……?」
「この及川さんを無下に出来るのはちゃんと岩ちゃんくらいだよ」
「あ…」
彼女が顔を上げた瞬間に唇を奪う。
驚いて固まるちゃんをしっかり見つめて言った。
「初めて試合見に来てくれた日に恋に落ちたのはお互い様だったんだね」
「……?」
それは青城の体育館での練習試合だった。
マッチポイントからデュースが続き、緊迫した中最後に岩ちゃんのスパイクが決まって試合終了。
スコアは確か34-32だった気がする。
勝利の熱気が落ち着いて観客の生徒たちが帰って行く中、ただ一人2階の立ち見の席で座り込んでいた女の子。
終わるとすぐに居なくなる他の生徒とは違ってよっぽど真剣に観ていてくれたんだと思うと胸が熱くなったのを覚えてる。
「ちゃん、告白はちゃんと本人に言わなきゃ、ね?」
「!!?///」
「本人、ここ」
目を丸くして口をパクパクさせていたけれど、ちょっとすると観念したように唇をきゅっと結んで俺の目を見た。
あ、ヤバイ。
こっちが緊張してきた…。
「…お、いかわ先輩」
「…はい」
返事、少し声が上擦った…。
「先輩のこと………………好き…」
「………////」
あぁ…想像していたよりもヤバイ。
ダイレクトに下半身にクる。
勢い任せに抱き付きたい気持ちを抑え、爽やかな笑顔を作る。
「俺も…ずっと大好きだったよ」
「……はい///」
恥ずかしそうに俯く姿に我慢が出来ず抱き締める、その2。
もちろん、この後にキスが続くのは言うまでもないよね?
END