第3章 現実は小説より奇なりなんて事はそうそうない。(及川徹)
こう見えて諦めが悪いんです。
いや、粘り強いんです。
いや……努力家?
最も
バレーと、彼女の事に関してだけなんですけど…ね?
「ちゃーんっ」
「及川先輩、それ以上近付くなら殴ります、イエ蹴り倒します」
「またそんな怖いこと言ってー…笑っている方が可愛いよ」
「余計なお世話です」
いつも、こう。
この及川さんが愛してやまないと言うのに目の前の彼女は一向に靡かない。
それどころか笑顔も向けてくれない。
それが何故だかさっぱりわからない。
「あ」
考え込んでいる間にちゃんは廊下を進んで歩いて行ってしまった。
2学年の差は大きくて校舎の階も違えば移動教室でも会わない。
放課後は練習があるから、昼のこの限られた時間しか俺にはないと言うのに。
ましてや同じ高校生活は一年しかない。
いや、もう半年か。
「及川先輩だぁー♪」
「カッコイイ…♥」
気が付けば回りには1年生の女の子達。
キラキラした顔でこっちを見てる。
ほら、これが普通の反応でしょ?
応えるように笑顔を振り撒いていると鬼の形相の岩ちゃんが向かってくるのが見える。
やば、見つかった。
「毎日毎日、手間掛けさすなァ!昼練始まんだろーが!」
こうして岩ちゃんに捕まり引き摺られる様にして体育館へ向かう。
その様子を愛しのちゃんが見てるなんて思いもせずに。
「ねぇ、…及川先輩の事嫌いなの?」
「………違うの」
「えぇ?」
「……………好き過ぎて、皮肉っちゃうの…」
「えぇー!あんたって子は……」
もちろん、こんな会話が繰り広げられていたことも知る由もない。