第20章 恋に下心があるなんて決まりきった事なんだ。(澤村大地)
「ってそんなに怖がりだったのか?」
「いえ…普段はそんなになんですけど…潔子先輩も帰っちゃって心細くて…すいません」
「あー清水は家近いからなぁ」
歩幅を合わせるようにゆっくり歩いてくれる澤村の優しさに胸がジンとしてしまう。
チラリと澤村の顔を盗み見れば凛々しい表情にときめいてしまう自分がいる。
(大地先輩…かっこいいなぁ……でも…)
は密かに澤村に憧れていた。
今みたいに素敵だなと思ってはただの一年マネージャーな自分には到底無理だと言う考えに辿り着き落ち込む。
その繰り返しだった。
「じゃあ、俺も部屋に戻るけど大丈夫か?」
「あ……はい」
大きくない合宿所だ、すぐにの部屋の前に着いてしまう。
また一人になるのかと思うと怖くなる。
澤村が隣にいた時はそんな事すら忘れていたのに。
「…………」
「…………」
「…?」
「あっ!な、何でもないです…!おやすみなさい…」
は慌ててドアノブを掴む。
その手は少し震えていて、澤村の目にもハッキリと見えていた。
「だ、いち先輩…?」
ドアを開けようとしたの手を澤村の大きな手がそっと掴む。
それだけで安心して震えが治まっていった。
「今強がったって何にもならないでしょ」
「あ……」
「ホントは?ちゃんと言ってみ?」
「……ホントは、」
促されはぽつぽつと話し始める。
澤村はそれをじっと聞いていた。
「ホントは…まだ怖くて」
「うん」
「眠れるか…不安で…」
「うん」
繋がれたままの手はじんわりと温かい。
「落ち着くまで一緒にいるよ」
「でも…!先輩に迷惑が…!」
「迷惑とかじゃないから、俺がそうしたいんだ」
「先輩…?///」