第20章 恋に下心があるなんて決まりきった事なんだ。(澤村大地)
「じゃあちゃん、また明日ね」
「…はい」
「6時前には私来るようにするから」
「はい潔子先輩、お疲れ様でした…」
合宿の夜、玄関先にて一年マネージャーのは今まさに帰宅しようとしている先輩の清水を見送っている。
カチャリと扉が閉まると一気に不安が押し寄せる。
(潔子先輩いないと…不安だなぁ……)
は格別怖がりと言うわけではない。
今こんなに不安になっているのは同級生の何気ない一言のせいだった。
「うぅっ…日向の馬鹿…!」
それほど新しくもない合宿所に対し「何か出そう!」と言い放った日向。
清水が帰る前はさほど気にならなかったのに一人になった途端に怖くなってしまった。
「部屋に戻ろう…」
暗い廊下はの恐怖心を更に煽る。
一歩一歩歩く度に心臓も早く動く。
「?」
「~~~ッッ!!!キャーーッッ!!!」
「うわっ!///」
突然背後から声を掛けられ、は叫んで近くの何かに飛び付いた。
「やだやだやだ!!怖いーっ!!……大地先輩…」
「//……あー…?」
「俺がいきなり声掛けたから…驚かせちゃったな、ゴメン!」
聞き慣れた2つの声には顔を上げる。
そこには申し訳なさそうにする菅原とほんのり顔を赤くしている澤村の姿があった。
菅原が声を掛けてが驚いて飛び付いた先が澤村。
そんな自分の置かれている状態をは漸く理解した。
「…すみません!!!///私…大声出して…!大地先輩もすみません!////」
「いや、俺はいいけど…は大丈夫か?」
「え…?」
「スガ、後の見回り頼んでいいか?ちょっとを部屋まで送ってくるわ」
「おう、後は風呂場だけだし俺見てくるよ、マジでゴメンなー!」
もう一度に手を合わせ謝り菅原は風呂場の方へと向かっていった。
「大地先輩…あの、」
「うし、行くべ」
優しく笑う澤村には申し訳なさが込み上げてくる。